2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

八月の鯨。

リビーとセーラの老姉妹は、毎年夏には、メイン州の小さな島にあるセーラの別荘にやって来る。メイン州ってのは、アメリカ合衆国の北東部にある小さな州。夏には、鯨が来るそうである。 岩波ホールへ行くのは久しぶり。神保町交差点近くの案内板。 間もなく…

愛、アムール。

壁面いっぱいが書物やCDで埋めつくされた居間には、大きなグランドピアノがある。80を過ぎた元音楽教師の夫婦が住む。パリ市内の優雅なアパルトマンである。 ある日、女房に異変が生じる。突然、記憶が失われる。 その時は、すぐ元に戻る。医者に行き治…

世界にひとつのプレイブック。

4〜50年前の日本、如何に死ぬべきか殺すべきか、という若者がいた。そのことに、シャカリキになっている若者たち。少し前のアメリカにも、シャカリキになっている若者がいる。こちらは、自らの心の揺れと戦っている若者である。 作品賞、監督賞、脚色賞、…

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程。

バランスをとっているわけじゃない。また、三島と楯の会の若者たちを観たから連合赤軍も、というわけでもない。4〜50年前の日本、激しく動いていた。右であれ左であれ、一途といえば一途。 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』、若松孝二の2…

11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち。

多くの客を呼ぶことができる映画は、シネコンでやっている。そうじゃない映画はどこでやっているのか。こりゃ客が入らないよという映画や、シネコンで掛かったがいい映画なので今一度、というような映画。 つい先日、2月、柏に”TKPシアター柏 suppo…

千年の愉楽。

昨日、間違ったことを記した。 最後の2行、バラク・オバマについて、こう書いた。<アフリカの血を受け継いでいる。奴隷の血を引く>、と。 バラク・オバマの父親はケニア人。だから、”アフリカの血を受け継いでいる”はそうである。 しかし、その後の”奴隷…

ジャンゴ 繋がれざる者。

1858年のテキサス、鎖に繋がれた黒人奴隷の列が行く。持ち主の白人は馬に乗っている。元歯医者、今は賞金稼ぎの男が追いついてくる。もちろん白人。奴隷の一人に用がある。 こうして、元歯医者で今はお尋ね者を殺し賞金を得る、賞金稼ぎのドクター・キン…

SAVAGES / 野蛮なやつら。

ハードパンチャー・オリバー・ストーンの最新作である。クライム・ムービーである。オリバー・ストーン、腕っ節の強いところを見せてくれるだろう。撃ち合いがある。殺し合いがある。拷問も爆破もある。まったくもって、野蛮なやつらが出てくる。 カリフォル…

フライト。

フロリダ州のオーランドからアトランタへ向かっていた旅客機が、突然急降下を始める。それまでの乱気流を巧みな腕で切り抜けた機長は、水平飛行に移ったあと、操縦を副操縦士に任せ眠っている。旅客機は高度3万フィートからどんどん落ちる。 機長の出番であ…

ゼロ・ダーク・サーティ。

もう2年近くになる。 一昨年5月1日、ホワイトハウス地下の危機管理室には、大統領のオバマはじめバイデン副大統領、ゲーツ国防長官、ヒラリー・クリントン国務長官、以下当時のアメリカ政権中枢の人たち10数人が集まっていた。オバマはワイシャツの上に…

尊厳の芸術(続き)。

日系アメリカ人が収容された強制収容所は、アメリカ政府の戦時転住局管轄のものが10か所、司法局管轄のものが4か所あった。12万人の日系人が送られた。 その中で、限られた材料と道具をもとに多くの日用品、美術工芸品が作られた。生活に必要なもの、生…

尊厳の芸術。

昨年末に積み残した展覧会、これだけは積み残しちゃいけない、というものをあと一つだけ触れる。 昨年・2012年、「日中国交正常化40周年」であり、「日印国交樹立60周年」の年でもあったが、日系アメリカ人の強制収容から70年の節目の年でもあった…

ビル街のアジア。

「天竺」の時代は措くとする。明治以降でも、日本人とインドの人、心を通わせてきた例は多い。 岡倉天心とラビンドラナート・タゴール、新宿中村屋の相馬夫妻と革命家、ラス・ビハリ・ボース、東條英機とインド独立国民軍のスバス・チャンドラ・ボース。皆、…

「富国強兵」ねー。

春秋戦国時代、多くの国が起こり軍備拡張競争を行っていた。「富国強兵」競争を。中国での話。しかも、紀元前8世紀から紀元前3世紀にかけてのことである。 今日、第12期中国全国人民代表大会の閉幕演説で、国家主席・習近平はこう話している。 「戦争に…

大震災、満2年(続き×2)。

明治29年(1896年)6月、岩手県沖を震源とする巨大地震が起きた。「明治三陸地震」、と呼ばれるもの。津波も襲った。2万人を超える死者が出た。その2か月後、宮沢賢治が岩手に生まれた。 昭和8年(1933年)3月、岩手県沖を震源とする巨大地震…

大震災、満2年(続き)。

新潮社の新書編集部の皆さん、「このような時に何をすればいいんだろう」、と考えたそうだ。大震災の3か月後、『復興の精神』を出している。養老孟司、山内昌之など9人が執筆している。 <「がんばろう」「団結しよう」「希望を持とう」・・・・・のメッセ…

大震災、満2年。

あれから丁度2年が経つ。多くの人が死に、今なお多くの人が避難している。復興の進捗度合いに不満を持つ人が多い。 1週間ほど前、「マイケル・サンデルの白熱教室@東北大学」が流れた。 ハーバード大教授・マイケル・サンデルの白熱教室は、このところの…

この人は聖人。

昨日の会田誠は、エロでグロで、反良識、反常識、反社会で、右でもあり左でもあるが反政治的で、といった作家である。音声ガイド(無料である。東博でも500円取るのに)での会田誠本人の話の内容から思うに、案外マトモな男である。 「天才」云々も、よし…

天才か?

絵描きには変わったヤツが多い。しかし、自ら天才を公言する人は、そうはいない。そうはどころか、まあいない。近場で思い浮かぶのは、こちらでは岡本太郎、あちらではサルバドール・ダリぐらい。 会田誠展、六本木の森美術館で今月末まで催されている。その…

何とか仮面。

子供のころは変身願望がある。大抵は正義の味方。月光仮面のような。風呂敷をマントにする。ハンカチで顔を覆い色眼鏡をかける。お面があればいいのだが。大したお面はない。それもセルロイドのペラペラしたもの。 銀座の路地裏の小さなギャラリーでの「仮面…

文化庁メディア芸術祭。

半導体では置いてけぶりをくった。家電製品ではサムスンに大きく離された。車もそう安穏とはしていられない。もの作り日本、いくつもの局面で追いこまれている。このこと、何も為替レートの問題ばかりじゃない。 その中で、アニメや漫画といった分野で日本は…

求道者。

これから大阪、京都と巡回していくようだが、新槐樹社の東京展、2月の初中旬、乃木坂の国立新美術館で催された。会員である光田節子の作品を観に行くのも3年目となる。 招待のハガキが来た時から心づもりはしていた。おそらく、こうであろう、と。 まさに…

たけしとヤノベのコラボ。

北野武乃至ビートたけしは才人である。映画監督、映像作家としては、紛れもなく「世界の北野」である。その北野武、絵描き乃至造形作家としても、世界へ向けて歩を進めているやに見える。 直感というか、ともかく感覚が鋭い。他人の先を行く、という思いを人…

風が吹けば桶屋が儲かる。

MOT(東京都現代美術館)、2月初めまでの二枚看板の企画展あと一本はこれである。 ンッ、「風が吹けば桶屋が儲かる」。コンテンポラリー・アートの世界にはチョッとどうかな、馴染むのかな、と思われるタイトル。 イヤ、”風が吹けば桶屋が云々”のことは…