八月の鯨。

リビーとセーラの老姉妹は、毎年夏には、メイン州の小さな島にあるセーラの別荘にやって来る。メイン州ってのは、アメリカ合衆国の北東部にある小さな州。夏には、鯨が来るそうである。

岩波ホールへ行くのは久しぶり。神保町交差点近くの案内板。

間もなく、4月上旬で打ち切りとなるが、名作の誉れ高い『八月の鯨』が掛かっている。
監督はリンゼイ・アンダーソン。1987年の作品である。
姉のリビー、若い頃、第一次世界大戦で夫を亡くした妹・セーラの面倒をみた。今、視力を失った姉・リビーの世話は、妹のセーラがみている。
姉妹の幼馴染みのティシャ、何でも修理屋の老人・ヨシュア、没落ロシア貴族のマラノフ氏。姉妹を取り巻く人たちがいる。当然だよ。、皆さん老人。これらの老人が8月のメイン州で・・・・・、となるのだが。
そう。そう大したことは起こらない。
目が不自由な姉のリビーは、安穏な精神状態ではない。ギスギスとしている。妹のセーラも・・・・・。

撮影時、妹セーラ役のリリアン・ギッシュは91歳、姉リビー役のベティ・ディヴィスは79歳であったそうだ。
これほどの年齢になると、10歳ばかりの差、どうーってことない。

岩波ホール、2月9日で、創立45周年となったそうである。
今年のその日、総支配人の高野悦子が死んだ。
エレベーターを上がり、劇場内に入ったところに、「お知らせ」というビラが貼ってあった。
2月9日、「岩波ホール創立45年目のその日に、総支配人の高野悦子が永眠した」、と。末尾には、岩波ホールスタッフ一同、と。

こう言っているが、そうかなあー。
その年の夏には姿を現さなかった鯨も、翌年の夏には、また姿を現すのじゃないかなー。
老姉妹の季節も、”変わっていく”のじゃなく、”同じように流れて行く”のじゃないかなー。