たけしとヤノベのコラボ。

北野武乃至ビートたけしは才人である。映画監督、映像作家としては、紛れもなく「世界の北野」である。その北野武、絵描き乃至造形作家としても、世界へ向けて歩を進めているやに見える。
直感というか、ともかく感覚が鋭い。他人の先を行く、という思いを人に抱かせる。世間の連中より一歩先を歩んでいる、と思わせる。いずれも概ね正しい。
しかし、一歩前を行くように思わせながら、半歩後ろを歩いている、というのがより正しい。この方が説得力があるんだ。我々一般大衆に、「成程そうか」、と感じ入らせられるんだ。
この術は難しい。でも、北野武乃至ビートたけしは鋭い感覚を持っている。この術を会得している。
ひと月ほど前、MOT(東京都現代美術館)のエントランスホールの中程にヘンなものがあった。

こういうもの。
何じゃこれっ。

少し離れたところにこういうものがある。女の子が読んでいる。私も読んでみた。

こういうことが書いてある。
ビートたけし×ヤノベケンジのコラボレーション。
タイトルは、≪ANGER from the Bottom(地底からの怒り)≫。たけしのアイデアにヤノベケンジが応えた、というものらしい。
しかし、たけしの”水龍神”とか”お岩さん”とかという言葉、易々と引っかかってはいけない。半歩後ろを歩きながら、一歩先を行くと思わせる術なんだから。

ヤノベケンジの反応も載せておこう。

触っちゃいけない。でも、写真は撮ってもいい。
1時間に1回、何かが現れるようだ。

少し、何かが出てきた。

何か、光っている。

頭のようだ。
目が赤い。


せり上がっていく。
頭頂部に斧が打ちこまれている。意味がある。金の斧、イソップ童話のパロディーなんだ。

立ち上がった。水をf吐いている。

思い切り水を吐いている。
現代気鋭の造形作家・ヤノベケンジ、京都造形芸術大学の教授でもある。たけしのアイデアをもとに、自らの教え子である学生たちを使い、この≪ANGER from the Bottom(地底からの怒り)≫を造りあげた。
高さは、約8メートル。

顔面。
怒っている。しかし、悲しさを含んでいるようにも見える。

暫らくすると、徐々に沈んでいく。

少しずつ少しずつ。

頭を前へ倒した。目は光っている。

頭頂部に打ちこまれた斧が見える。

すっかり隠れた。

企画展、「風が吹けば桶屋が儲かる」を観てエントランスへ出てくると、こういう場面に行きあった。
1時間に一度のたけしとヤノベのコラボ。今度は後ろの方から眺めた。
なお、この作品、この後、今月20日から開催される「瀬戸内国際芸術祭2013」へ運ばれる。