ゼロ・ダーク・サーティ。

もう2年近くになる。
一昨年5月1日、ホワイトハウス地下の危機管理室には、大統領のオバマはじめバイデン副大統領、ゲーツ国防長官、ヒラリー・クリントン国務長官、以下当時のアメリカ政権中枢の人たち10数人が集まっていた。オバマはワイシャツの上にジャンパーを羽織っていた。ワイシャツ姿の人が多かった記憶がある。しかし、その視線は硬かった。
集まった皆さん、一点を見つめている。視線の先、テレビモニターの画面には、パキスタン・アボッターバードから送られている映像が流れている。アメリカ海軍の特殊部隊・ネイビーシールズが、”ジェロニモ”を殺害する様子が送られた。
私たちは、そのホワイトハウス地下の危機管理室で、”ジェロニモ”殺害を見守るオバマ以下米政権中枢の人たちの様子を、その翌日あたりに知った。しかし、オバマ以下アメリカの政権中枢の面々は、”ジェロニモ”殺害を、どうもライブで見ていたようで、そのことに驚いた憶えがある。

”ジェロニモ”、彼を追いつめるCIAの暗号名である。アルカイダの中心人物・ウサマ・ビンラディンの。
アルカイダによる9.11の同時多発デロは2001年。それ以後のアメリカ、アフガンへの攻撃に踏みきりタリバンの政権を倒した。だが、どろどろの闘いに引きこまれる。アルカイダを叩く。でも、その首領であるウサマ・ビンラディンの行方は、杳として知れず。
「ゼロ・ダーク・サーティー」、監督は初の女性アカデミー賞監督・キャスリン・ビグロー、脚本はマーク・ボール、主演はジェシカ・チャステイン。本年度のアカデミー賞の作品賞、主演女優賞ほか5部門にノミネートされていた。気合いの入った映像である。
主人公は、CIAの分析官・マヤ。高校を出てすぐCIAにリクルートされ、それから10年少し。20代後半の女。アルカイダとの戦いの前線、パキスタンのCIAイスラマバード支局へ配属される。
配属初日から厳しい任務が待っている。CIA、アルカイダの疑いのある容疑者を拷問にかける。この作品、昨秋、ビンラディンを殺したオバマの再選に有利に働くのじゃないか、と公開日について共和党から声が出た。そんなことはない。民主党であろうとも拷問、変わらない。アメリカの戦い。

”ゼロ・サーティー”でなく、その間に”ダーク”が入ると、夜中の0時30分、午前0時30分となるそうだ。確かに、理に叶っている。
2011年5月1日、アメリカはアフガン・パグラム空軍基地からブラックホーク戦闘ヘリコプターを発進、パキスタンの首都・イスラマバードのわずか北東50キロの地にあるウサマ・ビンラディンの隠れ家を急襲、ビンラディンを殺害した。
「ゼロ・ダーク・サーティー」、その実録である。

彼女がウサマ・ビンラディンを追いつめた。この話、実話なんだ。

主人公のマヤ、高校を出た後CIAにリクルートされた、という。それから10年少し経つらしい。だから、今は20代ぎりぎりの年代の女性である。
鋭い感覚を持つ女性である。それだからこそ、ビンラディンを探し出せた。9.11同時多発テロの首謀者・ウサマ・ビンラディンを殺害した。
でも、終わらない。