京都・洛西苔めぐり(3) 常寂光寺。
野宮神社から出、来た道を戻る。
来る時には誰も聴いていなかった打楽器のふたり連れ、帰りには多くの人が囲んでいた。
天龍寺北門から先は、大河内山荘まで竹林の道が約200メートル続く。
これぞ京都・洛西嵯峨野と記念写真を撮る人も多い。
京都・洛西である。嵯峨野である。
両側の柴垣に竹林の間の道は、幅3メートルあるかどうか。
横に目をやり、柴垣を通して竹林を見る。
<そうだ。京都行こう。>。
JR東海のキャッチコピーが浮かんでくる。このような光景を見ると。
左は大河内山荘である。かってのチャンバラ映画の大スター・大河内伝次郎が金にあかせて創りあげた広大な庭園である。しかし、私はスルーした。
実は、腹が減っていた。すぐ近くにトロッコの嵐山駅がある。駅前には食堂があるのじゃないか。そこで何か食べたい。
大河内山荘前の標識。
トロッコ嵐山駅までは徒歩2分。その後、常寂光寺までは徒歩6分、落柿舎までは徒歩8分、二尊院までは徒歩10分。まずは何かを食うためトロッコ嵐山駅へ向かう。
トロッコ嵐山駅の周りに食堂はなかった。焼き芋を売っていたのでそれを食べた。その内、ソバが売られていることに気がついた。半分ばかり残したが、ソバを食った。そこで3〜40分ばかり休んだ後、常寂光寺へ向かった。
常寂光寺の山門前。
パワフルな感を受ける中国人と思しき親子づれがいた。彼ら、暫らく何やら話していたが、ここには入らず歩き去った。
山門を入ると、先の方に仁王門が見えてくる。
その両側、青もみじと素晴らしい苔の世界である。
その幾つかを切り取る。
例えば、これ。
これ。
得も言えず。
仁王門。
仁王門をくぐり、石段を上がる。そこから振りかえる。
このあたり、小倉山の山麓である。
小倉山って、小倉百人一首の小倉山、その選者である藤原定家の時雨亭の跡。苔の斜面である。
本堂。
本堂の側。
地表は苔。
側道を下りる人がいる。
こちらの道を下る人も。
木々の向こうに鐘楼がある。
本堂の裏へまわる。
本堂の裏の縁側に座っている人がいた。初老の女性と若い男。外国人。そのふたり、連れであるように見えるのであるが、まったく言葉を交わさない。ただじっと前を見ている。
本堂裏のこういう光景をじっと見ている。
休憩のため縁側に座った私、どこからきたのか声をかけた。
サンフランシスコから来た、という。日本には9日間の旅行で来たが、京都には4日いる、という。話している内にふたりが親子だということが解った。
それよりも彼ら、面白いことを言った。
「日本へ来てからアメリカのニュースを見ないようにしている。だから、とても気持ちがいい」、と。
トランプのことを言っているんだ。トランプにかかわらなかってせいせいしている、ってことのようなんだ。「USには変わった人がいますからね」、と言うと、「ほんとにそう」、って顔をしかめた。
サンフランシスコ、リベラルな町である。お母ちゃんは60年代末から70年代初めにかけてが青春時代であったようだ。ヒッピー、反ベトナム戦争、そのような時代を生きたよう。ジョーン・バエズ、PPM、ボブ・ディランから、ボブ・ディランがらみでアレン・ギンズバーグ、さらにジャック・ケルアックへと飛んでいく。サンフランシスコからきた初老の女性、とてもインテレクチュアル。面白い。
50年前のジョン・ケージまでにいった。
息子、こう言っていた。
「今年の夏、50年前のフェスの50周年で、大きな催しが催される」、と。50年前、サンフランシスコ郊外のモンテレーで大きな野外フェスが催されている。そのことらしい。
目の前にはこのような光景。
この先には多宝塔がある。
しかし、私はそこまでは行かなかった。
このような光景の中にあることだけで幸せ。
常寂光寺を去る。
仁王門を過ぎ・・・
山門をくぐる。
こういう花があった。
地涌金蓮。
中国雲南省原産、バナナの仲間だそうである。