石田宏画文集『山城 京 京丹波 丹後 若狭』。

暑い盛りの8月中旬、石田宏から画文集が送られてきた。
石田宏からは年に1冊くらいの頻度で画文集が送られてくる。『ほろ酔い画帖 街々邑々』とか、『街々邑々 勝手に〇〇案内』とか、『勝手に街歩き』とか、『酒場呑み』とか、『食堂呑み』とか、『銭湯』とか石田宏があちこちを経巡った成果である絵と文。これが面白い。
飲み会の時に手渡しということもあるが、新型コロナと猛暑の今年は郵便受けに入っていた。
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石田宏の今回の画文集は、『山城 京 京丹波 丹後 若狭』。
A4判、100ページ余にぎっしり詰まっている。
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このような紙片が挟まれていた。
京都と言うより京都圏は、石田宏が言うようにゆれ幅が広いな。
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京都府南部、奈良県に近い加茂から今回の画文集は始まる。
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木津、洛中よりも奈良や大阪が近い。
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1点取りだそう。味がある食堂。
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伊右衛門って元々は材木問屋だったんだ。本木雅弘は知ってるかな。
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石田宏、建築家であるのでもとより絵が上手い。趣きのある宿場町ともなれば文にもリキが入る。
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26人のキリシタンが長崎で殉教したのは知っているが、長崎へ送られる前にここで耳を切り落とされたのは知らなかった。
大徳寺山門の利休像設置で、利休が秀吉から切腹を命じられたことは知っているが、利休の身長が6尺もあったことは初めて知った。
石田宏の画文集、勉強させてくれる。
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建築家の描く線は、くねくねしているようでありながら、建物をしっかり支えている。
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島原だ。
島原と言えば、そう輪違屋だ。学生時代の仲間内の久保寺洋子の《輪違屋》である。
毎年秋になると、二科展の久保寺洋子の作品《輪違屋》の前で学生時代の仲間が集まり、その後、石田宏が由来の六本木の「松ちゃん」へ行っていた。
右下に輪違屋がある。それを取りだす。
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暑いころだったか、久保寺から「今年は新型コロナで二科展がなくなった」という連絡がきた。
今年の輪違屋は、久保寺の100号の油絵でなく石田の小粋なスケッチで。「松ちゃん」での飲み会はなくなったが。
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石田得意の似顔絵即描。
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ここも。
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庶民、まさに庶民。石田の真骨頂。
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そうなんだよ、先斗町通り、道幅一間ほど。狭い。
あー京都に来たんだな、と思うところはあちこちにあるが、狭く小さな先斗町通りもそのひとつ。
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西本願寺から堀川通を渡った寺内町に西本願寺伝道院がある。伊東忠太の手になる存在感のある建物である。
伊東忠太の建物は面白い。築地本願寺もそう。どこかコテコテってところもある。おそらく若いころ3年に亘り中国、インド、トルコ、エジプト、・・・、・・・と巡り歩いたことにあろう。
20年以上前、東大創立120周年記念の東京大学展が催された。図録を探すと見つかった。1997年11月との書きこみがある。
建築家のスケッチやそれについての文は、どのような建築家も行っている。今まで多くの建築家のそれを見てきた。石田宏のスケッチや文もそうである。
その中で、これは凄いと驚いたのは伊東忠太の「野張と日誌」。これに優るものはない。東大展の時、東大の総合研究博物館で見た。数多くの調査記録。3年、1000日余の流離いの結果。
今、自らの人生を賭ける若者はいるのかな、と思う。
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京都の街中を流れる琵琶湖疎水、この南禅寺の水路閣も面白い。
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八坂神社。目の前は四条通。
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清水寺。
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六波羅蜜寺の空也上人像。一度見ただけだが、とてもユニーク。
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神護寺を含め三尾の寺々、今、錦繍に染まっているのでは。
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鳥居本の化野念仏寺。得も言えず不思議な空間である。
化野念仏寺へ向かう道の途中を少し横に入れば、瀬戸内寂聴の寂庵がある。
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永六輔と中村八大のこの曲、「きょうとー おおはらー さんぜんいんー ・・・」、心に沁みる歌であった。
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「二度と行くまい丹後の宮津 縞の財布が空になる」。丹後の宮津でピンとだした。
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酒呑みの石田宏の画文集、この早瀬の造り酒屋の画像で打上げとする。
とても面白い一巻である。行ったことがあるところもそうでないところも、旅をしている気分にさせてくれた。


アメリカっていう国は、やはり若い国なんだ。乱暴な国である、と思わざるを得ない。
今日の大統領選、事前の世論調査の予測に反し、トランプが突っ走っている。バイデン、トランプ双方が自分が勝つと語っているが、最終的には前回と同じくトランプが勝つ模様となっている。
いやな状況である。
3年前の夏前、京都へ苔を見に行った。2日間、洛西の寺を巡った。
常寂光寺の本堂裏の縁側に、年配の女性と若い男が座っていた。声をかけるとサンフランシスコから来た親子であった。9日間の予定で日本へ来ていて、京都へは4日居る、という。
日本ではテレビのニュースは見ない、という。トランプの顔を見なくてすむのでせいせいする、と言っていた。とてもインテレクチュアルな親子であった。
開票速報を見ながら、あの親子は今どうしているのかな、どう思っているのかな、と考える。