国技考。

大相撲名古屋場所、初日の模様はこのようであった。
まずは横綱大関、看板力士の場所入りから。

新大関・高安の場所入り。
高安、優勝を狙う、全勝で、と語っていた。

連覇を狙う白鵬、やや硬い表情で。

白鵬、初日の土俵入り。不知火型のせりあがり。

怪我が完全に癒えていない稀勢の里の土俵入り。
それにしても稀勢の里、どうして今場所出ることを選んだのであろうか。稀勢の里は日本相撲協会の看板、休場を口にすることを阻む圧力があったことはたしかであろう。しかし、それと共に稀勢の里本人の心の問題がある。おそらく、自己を客観視して冷徹な判断を下すことができないのであろう。協会のために、ファンのために、と思ってしまうのであろう。人がいいんだ。ある程度のスパンで考える勝負師としてはどうか、と心配する。

中日・8日目の幕内土俵入り。東西どちらであったか。
何かで読んだが、幕内力士の土俵入りも横綱土俵入りに近い意味合いを持っているそうだ。化粧回しをつまみ手をあげる所作も四股を踏むのと同じようなことである、ということだったような覚えがあるが、確としない。

中日、幕内土俵入りで最も歓声の多かったのは高安であったが、それに次ぐのは小兵のこの力士・宇良であった。

その宇良、翌9日目には横綱・日馬富士をとったりで下す。
その翌日10日目には高安と初っ切りのような相撲をとる。最後には首投げで敗れたが、館内沸きに沸いた。
宇良の人気、解らないではない。しかし、十両に落ちても苦戦を強いられている豊響とか、今を盛りでは御嶽海といったブルファイターが好みの私の志向にはフィットしない。

11日目には御嶽海に不覚をとった白鵬、翌12日目には通算勝利数で単独1位に躍り出る。

今日、千秋楽の白鵬土俵入り。

白鵬、日馬富士を下し39回目の優勝を成しとげる。
優勝インタビューで白鵬、「名古屋の皆さん、サンキュー」って。優勝39回目に掛けただじゃれをかます。私には、白鵬だから許されるだじゃれに思えるのだが、白鵬であるから致し方ないのであろう。

今場所の星取り。
最後まで優勝に絡んだ碧山と、自身、今場所は身体が切れていると語る栃煌山の星取りは顕著。

今場所の三賞。
御嶽海、北勝富士、阿武咲の名がある。これに今場所は星が上がらなかったが、貴景勝や正代などを加えた新しい世代が台頭してきている。
なお、嘉風、今日敗れて受賞はならなかったが、相撲巧者の大ベテラン。土俵入りでも宇良、御嶽海に次いで歓声が多い。
ここ数場所嘉風には、相撲の求道者という印象を持っている。

白鵬が通算勝利数1048勝をあげた翌日・22日の朝日新聞朝刊。
<そびえる白鵬 未踏の高み>の文字がある。
が、それよりも左の<国籍取得へにじむ苦悩>、という記事に目がいった。
白鵬が日本国籍を取得する意向であることが明らかになってきた、と記されている。少なからず驚いた。
これまで私は、白鵬は帰化しない、と考えてきた。白鵬は日本相撲協会と戦っている。日本人、いや日本国と対峙している、と思ってきた。だから、決して帰化はしない、と。それと共に、そうではあっても白鵬の一代年寄は認めるべきである、とも考えていた。しかし、日本相撲協会の態度はかたくなであった。前理事長の北の湖も現在の理事長・八角の執行部もその点についてはかたくなである。認めようとしない。
で、白鵬から意思を表に出したようだ。日本人になる、と。
今日の優勝インタビューで白鵬、こういうことを言っている。
「26年前、初代若乃花さんが相撲のルーツを探ると言う番組でモンゴルに来た。モンゴル相撲の横綱であった私の父親と対談をした。当時6歳であった私は・・・」、と語った。
解説の北の富士は、「あ、そういうことか」、と言ってスルーした。北の富士、初代若乃花のこの旅を知らないはずはないのに。NHKのアナウンサーは、このことをまったく知らなかった模様であった。
何たることだ。初代若乃花のこの時の相撲のルーツを探る旅、モンゴルばかりじゃなく、中国、韓国、旧ソ連、トルコ、さらにはセネガルなどアフリカの国々にも足を延ばしていた。NHKのアナウンサーへの教育、心許ない。
相撲は日本の国技であると言われる。アメリカの国技は野球であるのかアメフトであるのか、ということより遥かに明確に、日本の国技は相撲である。その国技について幾ばくか考えようと思っていた。が、眠くなってきた。次回にゆずることにする。

尾張名古屋の千秋楽。