東博の桜2017。

4月も下旬となった。
関東ではとうの昔に花の時季は過ぎた。花前線、今は東北、青森あたりであろう。今日、弘前公園は5分咲きの由、月末から来月初めにかけ津軽海峡を越えるのだろう。
今年は何処へも花見に行かなかった。ここ暫らくそのような年はなかった。が、今年は致し方ない。

2か月以上前の東博ニュース2、3月号には、「春一番」や「博物館でお花見を」の文字が。

中面には、東博のユルキャラである埴輪のトーハクくんと本館前のユリノキちゃんが、こう呼びかけている。
東博だけには行くことにする。

会期末も迫った週末、東博へ行った。

国宝≪花下遊楽図屏風≫。
六曲一双、紙本着色。狩野長信(1577〜1654)筆。
江戸時代初め、今から400年前のお花見の様子である。

その右隻1、2扇。
3、4扇は、失われている。

右隻5、6扇と左隻。
実は、この≪花下遊楽図屏風≫、東博の「博物館でお花見を」企画に、2年に一度は登場する。2年前の2015年、4年前の2013年にも登板している。いわば、この時季の東博のエースである。
2年前には、右隻、左隻共、各扇を載せている。まさに江戸期の人たちの遊楽図。

重文≪月次風俗図屏風≫。
紙本着色。室町時代、16世紀。
右端には正月の羽根突きなどの遊び、左端には雪遊びと年中行事が描かれている。「月次絵(つきなみえ)」である。

右から2番目、2扇には・・・

賑やかな花見の光景が。

≪源氏物語図屏風(若菜上)≫。
紙本着色。伝土佐光則(1583〜1638)筆。江戸時代、17世紀。

<六条院の庭で柏木らが蹴鞠に興じる・・・・・>、と説明書きにある。<満開の桜が恋の始まりを・・・・・>、とも。

≪色絵桜楓文木瓜形鉢≫。
仁阿弥道八(1783〜1855)作。
日本の春と秋を彩る桜と紅葉をとり入れた道八の名品。

小袖≪紅綸子地八重桜土筆蒲公英燕模様≫。
<たなびく雲に、春の訪れをつげる燕、桜、春草などの意匠は、公家文化の中で好まれた模様である>、との説明がある。

≪山海愛度図絵・花をごらんあそばしたい≫。
歌川国芳(1797〜1861)筆。大判 錦絵。
髪飾りは金色の桜。ナンと―。
東博は、「花のような美人に釘づけ」って記しているが、こんなキンキラキン女、私の趣味にはあわない。

≪不動明王立像≫。
木造、彩色、截金。平安時代、11世紀。
このお不動さま、桜材を用いているそうだ。珍しい。

≪比良山蒔絵硯箱≫。
塩見政誠(1646〜1719)作。
比良山は、古くから山風や桜の名所と知られ、多くの歌に詠まれてきた地だそうだ。

≪流水に桜透鍔≫。
銘 西垣勘平作。江戸時代、17世紀。
江戸期の鍔、命のやりとり、切り交えることはなかったであろう。

≪朧月桜花≫。
絹本墨画淡彩。木島桜谷(1877〜1938)筆。

木島桜谷、昭和初期、20世紀の作家。
「朧月に桜花」、押しよせる軍靴の音にどう対処していたのか。5.15、2.26の時代に。抗っていたのか、それとも朧おぼろで、その中に籠っていたのか。
1931年の満州事変には、また1937年の盧溝橋事変にはどうだったのか。「朧月に桜花」、朧おぼろで過したのか、木島桜谷は。
そのような余計なことも考えるが、木島桜谷の≪朧月桜花≫得も言えず。


暫らく手をつけられなかったが、戻っていく。
日常世界へ。