東博の桜(続き)。

桜木だけなら、花の名所はあちこちにある。しかし、この時季、屋外ばかりでなく屋内でも花見ができるのは、東博を措いて他にはあるまい、と東博しきりに自慢している。何年か前から。
たしかにこの時季の東博、”期間限定”というものを展示する。

≪観桜図屏風≫。
住吉具慶(1631〜1705)筆 紙本着色 江戸時代・17世紀。
<具慶は、徳川幕府の奥絵師。・・・・・公卿が穏やかな風景の中で観桜する江戸時代のやまと絵の典型といえる>、と説明にある。

≪十二ヶ月花鳥図屏風≫。
狩野永敬(1662〜1702)筆 紙本金地着色 江戸時代・17世紀。
<藤原定家が正月から十二月までの各月を代表する花と鳥を各一首ずつ詠んだ合計24首の和歌「詠花鳥和歌各十二首」をもとに描かれた屏風>、だそうだ。

12ヶ月の内、桜花が描かれているのは、右隻の第二扇。2月の情景である。
桜木の下にいる鳥は、雉であろう。

≪打掛 白綸子地紗綾形梅桜牡丹菊花束模様≫。
江戸時代・18世紀。
梅、桜、牡丹、菊が、日本を代表する花だったんだ。江戸期には。

≪色絵桜樹文十角鉢≫。
伊万里 江戸時代・18世紀。
<伊万里では元禄年間より、中国の金襴手に範を求め、金泥を色絵素地に焼き付ける豪華な意匠が流行した。・・・・・俗に型物と呼ばれる内需向けの金襴手である>、と東博の説明に。

≪瓢形酒入≫。
船田一琴(1812〜1863)作 銅・四分一 江戸時代・天保14年(1843)。
<素銅と四分一(銅と銀との合金)を継ぎ合わせて瓢形に作り、肩には雲間の月を銀象嵌で表わし、銅に鍍金の桜花を散らす>。
何てニクい手錬れの技。

≪源氏物語図色紙(花宴)≫。
土佐光吉(1539〜1613) (絵)紙本着色 (詞)彩箋墨書 安土桃山時代・16〜17世紀。
<光吉は安土桃山時代の土佐派を代表する絵師>、と東博。

≪桜図≫。
廣瀬花隱(生没年不詳) 絹本着色 江戸時代・19世紀。
落ち着いた色調の掛け軸。でも作家の名前は聞き慣れない名。19世紀の人でも生没年不詳の人、多くいる。

≪伊勢物語絵巻 巻二≫。
絵・住吉如慶(1599〜1970)筆 詞・愛宕通福(1634〜1699)筆 紙本着色 江戸時代・17世紀。
<土佐派から出て住吉派をおこした如慶の代表作で、・・・・・四代将軍徳川家綱の正室高厳院の御遺物として津軽家に伝承した>、との説明書きがある。
何れが業平かは知らず。でも、ふくよかな舌にとろける上品なお吸い物を思わせる絵巻である。