秋の雨。

濃淡さまざま鈍色の雲が流れていたが、昨日が中秋でよかった。流れる雲の間に間に、名月も顔を出したし。
今日は、日がな一日、雨。月はない。
数日前まで、暑い暑い、と言っていたのがウソのように肌寒い。急に秋が来た。雨も降ったし、秋はこうでなくっちゃ。
夕刻、雨が小降りになった頃、相撲中継を中断、外へ出た。水溜まりぐらい撮ろうかな、と思い。鶴竜と栃ノ心、栃煌山と琴欧州、好取組もあったのだが、今日の一番は、白鵬と魁皇の一戦。それまでには戻ろう、と。
「秋の雨」は、しとしとと降り続く、9月中旬から10月上旬にかけての霖雨(ながあめ)や、晩秋の頃に降る、しぐれめいた雨をさすことが多い。石田波郷は、そう言っている。秋もやや深まってからの雨、秋霖をさす、と。
つい先日まで、猛暑日が続いていた今年の場合、今日の雨は、厳密に言えば、それには当てはまらない。しかし、心の中では、やはり、秋の雨。そう言ってもいいだろう。暑いお日様は、もう十分、そろそろ雨でも、と待っていたのだから。
     妻のいふ男不精や秋の雨     河東碧梧桐
不精この上ない私であるが、小雨の中、外へ出た。

     秋雨や灯影に添うて町ありく     池内たけし
私のところ、この句のような風情があるわけではないが、小雨に打たれると気持ちいい。

雨は降っているのだが、どうも、そんな感じはしないな。水溜まりもチョコッとしたもの。水はけがいいのも、困りもの。風情がない。

枯葉が落ちている土のところは、まだ雨の中らしい。
     秋雨やよごれて歩く盲犬     村上鬼城
さすが、散歩をしている犬はいなかった。ウチの犬も部屋の中で寝そべっている。

小さな葉っぱに、雨粒がいっぱいついていた。
     かんざしで封切る手紙秋の雨     水谷八重子
もちろん、艶やかな初代の吟。今の二代目じゃ似合わない。ナイフじゃなく、かんざしで封を切るなんてのも、秋の雨夜(だろう)にぴったり。夏の日ならば、味がない。
白鵬と魁皇の一番には、間に合った。
白鵬、慎重な取り口だった。魁皇も頑張った。しかし、応戦はしたが、今まで多くの力士を屠ってきた、魁皇得意の右上手は引けなかった。グイと寄り切られた。おそらく、魁皇にとっては最後の横綱戦(そう思うのだが、あと二番勝つのかな)、敗れたが、満足感はあったろう。
その後、また雨脚、強くなった。
     秋雨の音たかぶりつ古畳     日野草城