雲間の名月。
相撲を見た後、散歩がてら月を見に出る。
今日は、旧暦8月15日で望の日、十五夜。中秋の名月だ。
しかし、雲が多い。案外風もあるので、薄暗い雲、次々と飛んでいく。月を隠したり、出したりしながら。中秋の名月だというのに。
今年の中秋の名月、雲間に見え隠れする月であったので、石田波郷編の歳時記から幾つかの句を拾う。
これじゃ、肉眼で見るより小さな月だ。少し近寄ろう。
今日の月すこしく欠けてありと思ふ 後藤夜半
十五夜とはいえ、満月ではない。満月は明日。だから、今年の中秋の名月、少し欠けている。
また、雲がかかってきた。
だんだん、このように。
ははきぎもわれも同じやけふの月 山口青邨
名月、雲の中に入った。中央あたりにあるのだが。
望の夜の北ぞらつひに暗かりき 堀葦男
北空ばかりか、南の空も暗くなってしまった。
雲が流れていって、また月が現われた。
このように。
名月や畳の上に松の影 宝井其角
もっと近寄ると、お月さまの中で餅をつくウサギや、可愛い女の子もいなくなってしまった。
以前にも記した憶えがあるが、普通のデジカメじゃ露出オーバーで、こうなってしまうそうだ。
この程度がいいのだろう。今夜の中秋の名月は。
名月やあすはすまふの何日目 久保田万太郎
さすが久保田万太郎、何でもないように見えて、ニクイ句だ。
冥界へ旅立って久しい、相撲好きの久保田万太郎に、今の相撲界のことを少し教えて差しあげよう。
明日は、秋場所の12日目なんですが、白鵬という強い横綱が独走してるんです。この白鵬、モンゴルから来た相撲取りなんです。いや、モンゴルより、蒙古と言った方がよくお解かりでしょうが。また、驚かれることとは存じますが、今の相撲の世界、上位陣、強い力士は、蒙古とかヨーロッパから来た相撲取りばかりなんです。
日本人の力士も、もちろん居ります。まあ、それがだらしないんです。期待しても期待外れになる奴ばかりで。そうは言っても、若手で何人か、有望な奴もいないではないのですが。さて、どうなりますか。
それ以上に、もっと驚くことをお教えしなければなりません。
先ほどの白鵬、今日も勝って、58連勝しているのです。双葉山の69連勝に迫っているのです。来場所には、あの双葉山の記録を抜くのじゃないか、と言われております。客観的に見て、その可能性はとても高いのです。吃驚したでしょう。どう思われます、万太郎先生は。
今の相撲、こういう状況です。でも、面白いですよ。
中秋の名月とは、少し外れたかな。