九州場所 千秋楽。

結果は、白鵬の5連覇。しかし、記憶に残る場所だった、と思う人が多い場所ではなかったか。
第1に、白鵬の連勝が止まった。。第2に、楽日まで”優勝争い”という言葉が使われた。第3に、期待されている若手日本人力士が、概ね揃って好成績をあげた。さらに、あの魁皇が12勝をあげた。いずれも、久しくなかったことである。
白鵬が、双葉山の記録を破ること、誰しも疑わなかった。白鵬自身、それを確信し、「双葉関への恩返し」という言葉を口にしていた。双葉山を尊敬し、双葉の”後の先”相撲を研究し、その時に備え、70連勝することを。稀勢の里に敗れたのには、驚いた。スキがあった。今ひとつ、”心”の部分が、至らなかった。
故に、今日の楽日まで、優勝争いが持ちこまれた。豊ノ島の快進撃により。例の野球賭博の問題で、先場所は十両に落されたが、三役経験も十分な豊ノ島、十両では格の違いを見せつけ、幕へ帰ってきたが、それでも前頭中ほど。ある程度の星をあげることは考えられたが、これほどの星をあげるとは思わなかった。
今日の稀勢の里との一番、勝つことは勝ったが、明らかにカタくなっていた。千載一遇のチャンス、緊張しない方がおかしい。白鵬との優勝決定戦で敗れた後、「悔しい。しかし、今日は、とっても幸せな一日だった」、と語っている。そうだろう。豊ノ島、平成22年九州場所の千秋楽、死ぬまで忘れないに違いない。
豊ノ島が優勝するということは、おそらく、今後もないだろう。絶好調時の今場所こそ、千載一遇のチャンスであった。何よりも、西前頭9枚目、という番付けが絶妙の位置。終盤にこそ、把瑠都や魁皇との割りを組まれたが、通常は横綱、大関との割りは組まれない位置。上位陣との取組みも少ない位置だ。大勝ちするには、絶好の位置だった。来場所は、また上位に戻る。ひょっとすると、小結となる。横綱、大関はもちろん、上位の力士との総当たりとなるのだから。また、厳しくはなろう。
大関取りの足がかり場所であった栃煌山は、負けこした。まだ、稽古がたりない、ということだろう。大関取りは、一から出直しとなった。だが、8敗で踏みとどまったので、来場所は関脇からは落ちるが、小結にはとどまる。まだ若い。一に稽古、二に稽古だ。
殊勲の稀勢の里は、久しぶりに二桁の勝ち星をあげた。来場所は関脇に返り咲ける。前頭西筆頭の琴奨菊も9勝をあげ、来場所は関脇に返り咲く。やはり、野球賭博で十両に落され、一場所で幕に戻った豪栄道も、幕尻の方だが大勝ちした。来場所は上位に戻ってくるだろう。
稀勢の里、琴奨菊、栃煌山、豊ノ島、豪栄道。この日本人力士五人衆、いずれも20代半ば、いずれも次の大関候補、いずれも期待の星だ。この五人衆、来場所は、三役ないし幕内上位に顔を揃える。この日本人力士五人衆に、私が次代のモンゴルのスターと思う鶴竜を加えた6人で、大関争いを繰りひろげてもらいたい。そうすれば、来場所以降ガゼン面白くなる。
毎場所、勝ち越しても8勝か9勝という魁皇が、12番も勝ったのには驚いた。いつ辞めてもおかしくない魁皇が。
今日も、立会いすぐに、把瑠都の腕を取って振った。これしかない、という技だが、やはりこれが魁皇、九州のお客さんには堪えられない。私から言わせれば、あれに引っかかる把瑠都、「お前、何考えてんだ」というところであるが。把瑠都、身体がデカく怪力ではあるが、まだ相撲のことが解かってない。
そうは言っても今場所の魁皇、二桁勝利は3年半ぶり、12勝なんて、最後に優勝した平成16年秋場所以来6年ぶり。驚き以上のものがある。今場所一番の功労者、と言っていい。
解説の舞の海は、「私は毎場所、魁皇が8番勝つかどうか、と思い解説していた」、と言っていたし、北の富士は、「ウーン、これじゃ、来年の九州場所も魁皇が帰って来ているかもしれない」、なんて語っていた。
まあ、それはないんじゃないか、と私は考えているが、魁皇という力士、白鵬とはまた別種の、己の道を進み、極めている力士であることには、違いない。
いずれにしろ、記憶に残る力士である。いや、記録にも。