スパイの妻。

1940年の神戸。
満州事変、日中戦争と中国大陸で戦いを拡大していく日本、米英蘭その他世界中を相手にした太平洋戦争も間近である。
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戦争突入の前夜。神戸で貿易会社・福原物産を営む福原優作とその妻の聡子。神戸の山手、芦屋か御影あたりに建つ豪邸。満洲への興味。目を光らせる憲兵隊。拷問。謎の女。
歴史の闇を紡ぎ、極上のエンタティンメントに仕上げている。
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『スパイの妻』、監督:黒沢清。
主人公の二人には、蒼井優と高橋一生。それに神戸憲兵分隊の分隊長に扮する東出昌大がいかにも、らしい。
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黒沢清、先般この作品で第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を取った。
新型コロナでヴェネチアへ行けなかった黒沢清、蒼井、高橋と共に日本で舞台挨拶。
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シネスイッチ銀座のデコレーション。
福原物産社長の福原優作、甥っ子の文雄を連れ満洲へ行く。頼まれた薬の仕入れということもあるのだが、今のうちに満洲を見ておきたいという思いもある。
その満洲の地で、国家機密に関わる恐ろしいことを知る。細菌兵器の開発、中国人を使った人体実験。現実の731部隊の人体実験を想起させる。
優作は、正義のために事の顛末を世に知らしめようとする。
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聡子は、満洲から帰ってきた優作の変化に気づいていく。
優作が連れ帰った謎の女、そしてその女の死。油紙に包まれたノート。金庫に隠されたフィルム。夫の別の顔。
それでも、優作への愛が聡子を突き動かす。
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聡子の幼馴染みで聡子への思いをずっと抱いている神戸憲兵分隊長の津森泰治は、目をつけられているぞ、危ないぞ、と聡子に話す。が、時代は引き返せない時代に進んでいく。
津森泰治自身、冷徹な男となっていく。反国家分子として捕まえた男に拷問を加え、両手の爪10本を剥ぎとるというような。
日本という国、そういう闇の歴史を持っている。
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簡略化した関係図。
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数か月前に記した塚本晋也の『斬』での蒼井優も凄かったが、この作品でも蒼井優の存在感、際立つ。
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もう一人の黒沢・黒沢清と蒼井優。
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黒沢と蒼井。


ヨコハマトリエンナーレに行ったり、それより何より菅義偉とドナルド・トランプの顔を見ていると気持ちが悪くなってきて、1か月お休みにしたり、と映画のことごとを中断して2か月余となる。
また暫らく映画を記す。