365分の1日。

新しい年が明けた。
昨日までの10日ばかり、年賀状を作らなけりゃと思っていながらも一向に取りかからなかった。以前に較べればめっきり少なくなったが、知り合いからの年賀状は届いた。3、4日の内に作って出そう、と考えている。去年もそんなことを考えていたが、実際に出したのは7日か8日であった。今年はどうなるか。
昨年はまったくと言っていいほど何所へも行かなかった。何となく具合が悪くなったり、夏は暑すぎたりで外へ出られなかったり、と。足や腰の負担が増したこともある。が、そんなことは言っておられない年となった。あと365日。杖をつきながらでゆっくりゆっくりであるが、出て行こうと思っている。年の初め、今年の目標である。あと365日であるから。
令和、令和と言っているが、日本という国にとって大きな変化は、明治への改元である。明治維新は単に武家政治が倒れ天皇制に戻った、ということではない。良くも悪くも強力な中央集権国家となった。天皇を頂点に戴いた。欧米先進国に追いつき追いこせだ。欧米列強に軍事力でも対抗しようとする。日清日露、朝鮮併合、台湾も。傀儡国家・満洲建国。さらに中国はじめアジアの国々への侵略。アメリカはじめABCD、いわば世界中を敵に回してこてんぱんにやられた先の戦争の敗戦は、当然の帰結である。
アレッ、正月早々、私は何を書こうとしているのかな。酒に酔っぱらっていたので、少し頭の中がおかしくなっているのかもしれない。
いや、明治維新となり欧米列強と軍事力で対抗しようとした動きの一方、欧米先進国に文化で対抗しようとした男もいた。そのことを記そうとしていたんだ。
大谷光瑞のことである。
19世紀末から20世紀初めにかけ、中央アジア、西域の地には欧米の探検隊が次々と入った。
スウェーデンのスウェン・ヘディン、イギリスのオーレル・スタイン、ドイツのアルベルト・フォン・ル・コック、フランスのポール・ペリオ、さらにロシアやアメリカの探検隊も、と。そのような中に割って入ったのが、日本の大谷光瑞である。浄土真宗本願寺派、つまり西本願寺の跡継ぎである。大谷光瑞、この時にはまだ法主になる前、まだ20代半ばの若者である。
大谷光瑞、1902年から19Ⅰ4年にかけ西域探検隊を3度にわたり送っている。1902年から1904年にかけての探検隊には、大谷光瑞自身も参加している。
第1次隊の1902年という年は、ヘディンの最初の探検隊である1893年よりは10年ほど後であるが、スタインの第1次隊の4年後、ル・コックの第1次隊と同時期である。大谷光瑞、イギリス留学中から駆けつけたそうであるが、本願寺さんのぼんぼんであるにしても気宇壮大、とても愉快である。
西域への探検隊、さまざまな文物を自国へ持ち帰った。時には剥ぎ取って。文化の収奪である。
20年以上前になるが、西域へ行った。敦煌の莫高窟やトルファン郊外のペゼクリフ石窟へも。敦煌莫高窟の敦煌文書は、スタインやペリオがわずかな金で持ち去った。ペゼクリフの石窟は酷い状態であった。あちこちの探検隊により、壁画が剥がされて持ち去られていた。特に遅れて来たアメリカ隊は、薬品を使って壁面を剥がしていったそうだ。大谷光瑞の探検隊は、そのような野蛮なことはしていない。
が、今、大谷探検隊将来品というものがある。
東博の東洋館と京都の龍谷ミュージアム、そして、韓国ソウルの国立博物館に収蔵されている。中国の博物館にも大谷探検隊将来品はあるようだが、それは見ていない。
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大谷探検隊将来品のこの仏像が好きなんだ。
≪如来像頭部≫。
中国、ホータン。3~4世紀。銅造鍍金。
ホータン出土の仏さまであるから、1902年から1904年にかけての第1次大谷探検隊の時の将来品である。この時には、ホータンやクチャを探検している。
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高さ17センチの小ぶりな仏頭である。
<口髭、見開いた目などガンダーラ・スワート地方の石彫像からの影響が見える。分厚い鍍金が部分的に残っている。西域における青銅製仏像彫刻の最古の遺例として大変貴重な作品です>、と東博の説明にある。
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好きな仏像は幾つもあるのだが、これも好き。


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今日、孫たち一家が来た。
去年は三が日いたが、今年は今日のみ。明日からは婿殿のジジババの方へ行くらしい。向こうのジジババも待っている。
冷凍技術の発達でお節の通販が伸びているそうだ。で、我が家でも北海道から取り寄せた。孫娘と孫坊主、その向こうでお年玉の袋を持ってハイポーズ。
夕刻、風呂に入った後、孫一家は帰っていった。
今年の365分の1日が終わった。