岸辺の旅。

今日、カンヌでは、第70回カンヌ国際映画祭の最高峰・コンペティション部門にノミネートされている河荑直美の『光』が公式上映され、10分に及ぶスタンディング・オーベイションを受けたそうだ。
河瀬直美、カンヌではビッグネームである。パルムドールを狙っている。
それはそれとして、私が観たのは今年であるが、黒沢清の『岸辺の旅』は一昨年、第68回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で監督賞を受賞している。

『岸辺の旅』、不思議な映画である。
幻想的であり、とてもリリカル。
ピアノ教師をしている瑞希の許に、3年前に失踪した夫の優介が戻ってくる。そして、こう言うんだ。「オレ、死んだよ」って。死んだって、幽霊ということなのかな。
で、瑞希と優介の旅が始まる。失踪した後の優介が関わった人たちを訪ねる。一人目は新聞屋の島影さん。そして食堂の夫婦、田舎の塾のようなところへも。
町中といわず田舎といわず、現れる光景、風景が美しい。

原作は湯本香樹実。この人、知らなかった。初めて知る名。
二人の主人公には、深津絵里と浅野忠信。脇を小松政夫、柄本明、蒼井優といった芸達者が固める。

右は新聞屋の島影さん、左は食堂の星谷さん。

新聞屋の島影さんも途中から消えてしまう。島影さんも幽霊だったかもしれない。
左は消えた島影さんが集めていた花の前の瑞希。

それにしても、瑞希と優介は何のために旅をしているのか。
3年の失踪の後、瑞希の前に現れた優介はこう言っていた。「(瑞希がこの3年の間に書いた)写経を焼くために」、と。
で、電車やバスに乗って、小さな宿に泊まって旅を続けている。

3年前、優介が疾走する前に不倫関係にあった朋子さんも出てくる(左上)。
瑞希は、このまま旅を続け優介と家に帰りたい、と思っている(右)。
しかし、別れなければならない時が訪れる。優介は、「オレ、死んだよ」って言って現れた男なんだから。幽霊と言えば幽霊なんだから。

死を扱っていながら、幻想的で抒情的な美しさにあふれる作品である。
カンヌで受け入れられたのもよく分かる。


今日、ドナルド・トランプは、ヴァチカンでローマ法王と会っている。
以前、メキシコとの国境に壁を築くとのトランプの言を窘めたローマ法王に対し暴言を吐いていたトランプ、今日は畏れ敬うという態度で接していた。
その場その場で外面を変えるトランプ。そんなトランプを、ローマ法王は先刻お見通しとお見受けした。ニュース映像を見る限り。