モンパルナスの灯。

ここ数日、この10日ほどの間に見に行った展覧会の模様を何回か記したが、暫らくの間映画のことごとにしようと思っている。
山田洋二の『男はつらいよ 50』からクロード・ルルーシュの53年後の『男と女』となり、なんとー、ポン・ジュノが『パラサイト』で英語以外の映画で初のアカデミー作品賞を取ったのでそれに触れた。そこに戻る。
53年前のルルーシュの『男と女』そして53年後のルルーシュの『男と女』、何と言ってもアヌーク・エーメであった。
そのアヌーク・エーメが出ている作品をあとひとつ繋げたい。
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『モンパルナスの灯』、1958年の作品である。
キネマ旬報のシアター、古いものも時折り掛ける。50何年ぶりにまた見た。
ただ古い作品の場合、困ることがある。ポスターもなければチラシもない。小さな紙片が貼ってあるのみ。ボーとした。
話自体はよく知られたものである。モディリアーニとジャンヌの物語。パリ、モンパルナスでの。
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監督はジャック・ベッケル。アメデオ・モディリアーニにはジェラール・フィリップ、ジャンヌ・エピュテルヌにはアヌーク・エーメが扮する。
リノ・バンチュラの名がある。懐かしい。フランス映画には度々敵役として登場した。この映画でも、モディリアーニの才能は認めながら、彼がそう遠くない頃に死ぬことを予期し、死を知った後すぐにモディリアーニのアトリエに行き、次々に作品を安値で持ち去る男を演じている。敵役の面目躍如。
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アメデオ・モディリアーニ、1884年にイタリアで生まれている。1906年、パリへ出る。
この頃、世界のあちこちから若い絵描きがパリへ来た。
マルク・シャガールがロシアから、モイズ・キスリングがポーランドから、シャイム・スーティンがベラルーシから、ディエゴ・リベラがメキシコから、そして藤田嗣治も日本から。エコール・ド・パリの画家たちである。みな似通った年回りである。
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ジェラール・フィリップ、フランスの二枚目の一典型である。私はジャン・マレーやアラン・ドロンの方が美形だと思うが、ジェラール・フィリップも美しいと言われた。これぞ二枚目と。
アメデオ・モディリアーニに相応しい。モディリアーニも優男で女にモテた。
『男と女』のジャン・ルイも、「オレは顔がいいのでよくモテた」と言っているが、優男、二枚目はよくモテる。困ったものだが。
次々と女のいるアメデオ・モディリアーニ、酒を浴びるほど飲む。不摂生で結核になる。そのような時、ジャンヌ・エピュテルヌが現れる。ジャンヌはまだ19歳の画学生。恋に落ちる二人。
ジャンヌには、アヌーク・エーメ。いや、美しい。
アメデオ・モディリアーニは1920年、36歳で死ぬ。その2日後、ジャンヌも身を投げて死ぬ。
ジェラール・フィリップも1959年、同く36歳で死ぬ。
美男美女は早世が似つかわしい。
が、アヌーク・エーメは、90歳近くなった今も健在である。不思議。