アンナとアントワーヌ。

2日前の昼間のNHK、久しぶりでウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』を見た。これはすこぶるつきで面白い。日本公開は2012年、8年前となる。
その頃この雑ブログでは、4月末から9月末にかけ、途中に幕間休憩を入れたが、79回にわたり「パリ+リスボン街歩き」を連載していた。その中で『ミッドナイト・イン・パリ』に触れた。5回にわたり。なにしろパリの街中を歩き回れるばかりでなく、ヘミングウェイやスコットとゼルダのフィッツジェラルド夫妻が出てくる。パリのアメリカ人の女帝、ガートルード・スタインのアパート、サロンに行けばパブロ・ピカソがいる。
モディリアニからブラック、そして今はピカソの彼女である妖艶なアドリアーナは、ある時、ヘミングウェイとキリマンジャロへ行ってしまう。ヘミングウェイに女を取られちゃったピカソは、ガートルード・スタインのところに来て「あのペテン野郎め」とヘミングウェイを罵る。が、スタインは、「あのふたりは合わないよ。その内戻ってくるよ」、と言う。その内ヘミングウェイとアドリアーナはパリへ戻ってくる。ガートルード・スタインが言った通り。
ダリやブニュエル、マン・レイも出てくる。その他これでもか、というぐらいに。
久しぶりにパリの街歩きを楽しんだ。
ずいぶん前になるが、「サイナラおじさん」と呼ばれた淀川長治は、「映画って面白いですねー。サイナラ、サイナラ、サイナラ」って言っていたが、まさにその通り。
「戦争の8月」となり、暫らく映画とは離れていたが、今日からまた映画に戻る。


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Now Showing、まずはこれから。相当前のNowであるが。
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『アンナとアントワーヌ』。
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あの『男と女』から50年。
それよりもこの背景、どう見てもガンガー、バラナシにしか思えないのだが。
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クロード・ルルーシュとフランシス・レイの黄金コンビによる大人の恋の物語。
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男は、映画音楽家のアントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)。ボリウッド版の『ロミオとジュリエット』の音楽を創るためインドを訪れる。女は、インド駐在フランス大使の妻・アンナ(エルザ・ジルベルスタイン)。
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フランス大使館で開かれたアントワーヌを歓迎するパーティーでふたりは出会う。
何処の国の大使館もそうであるが、その大使夫妻はべらぼうに優雅な日常を送っている。途上国の大使館であろうとも。一国を代表しているのだから。そんじょそこらの成金などでは足元にも及ばない。治外法権の世界でもある。
そんな恵まれた境遇の大使夫人が、パリから来た映画音楽家に興味を覚える。音楽家・アントワープにも、結婚を迫られている美人のピアニストがいる。
<愛に限界はない。誰かが誰かを深く愛していても、別の人間を好きになることもあるということを描きたかった>、とルルーシュは語っている。
愛なんだ。不倫なんて言葉は、ひょっとして日本以外にはないのかな、と思えてしまう。
少し寄り道をする。
昔、ミッテランは隠し子のことを問われ、「それがどうした」って堂々と応えていた。さすがミッテランであった。
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「愛の前奏曲 UN+UNE NEW DELRI➧KERALA」。
愛のプレリュードか。それより・・・
「UN+UNE」って。ルルーシュの『男と女』の原題は「Un homme et une femme」であった。「UN」と「UNE」はその定冠詞、いってみれば50年前と同じく「男と女」。
大使館のあるニューデリーからケララまで、ムンバイを経て旅をする。
女は、子供を授かるようにケララの聖者・アンマに会うために。インドにはさまざまな聖者と言われる人がいるんだ。
頭が痛くなった男は、その後を追う。
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ニューデリーからムンバイを経てケララまで。
インドには7度行ったが、南はムンバイまで。ケララには行っていない。
が、『アンナとアントワーヌ』、インドの状景をさまざま流してくれる。懐かしかった。もう訪れることはないであろうインドの状景、「あぁ」とつぶやきながら楽しんだ。
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が、映画の主題はアンナとアントワープの道行きだ。
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たった2日間の道行き。
結ばれる。たった一度。
何年も後、二人は空港で偶然に出会う。アンナは連れていた男の子にアントワーヌと声をかける。あの時の子か。分からない。
ジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』の末尾、ガソリンスタンドの場面を思いだす。あの時は女の子であったか。
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ケララに行ったことはない。
ケララの海、このようなのであろうか。


今日、大坂なおみ、ウィスコンシン州での黒人男性への白人警官の発砲に対し、準決勝へ進んでいたゲームを棄権した。
「私はアスリートである以前に黒人女性です」で始まる大坂なおみの言葉に驚いた。
大坂なおみ、繰り返される黒人への白人警官による銃撃に、もう反吐が出る、と語っている。
大坂なおみは私たち日本人にとっては、オリンピックの時にアメリカ人で出るのか日本人で出るのか、ということが関心事であった。日本人として出ると聞いて良かったと思っていた。
しかし、日常アメリカで戦っている大坂なおみにとっては、アメリカ人以前に黒人であるという意識があったんだ。日本人以前にも。
大坂なおみの行ないに、涙が出た。