ギャラリーナユタ 12の月のおくりもの。

昨年末、銀座奥野ビル410のGallery邨での丸山則夫展を見た後、511のギャラリーナユタへ寄った。美術評論家・早見堯から一度行ってみればと言われていたギャラリーである。
年の瀬の奥野ビル、いずれのギャラリーもさほどの人気はない。511のギャラリーナユタも、オーナーである品のいい女性がひとりいるだけであった。
それにしても「ナユタ」って面白い名だな、と思っていた。ギャラリーナユタのウェブサイトににこうある。
<Nayuta ナユタはきわめて大きな数量、無限大の手前。サンスクリット語で、すべてのものを含んだの意味だそうです>、と。ギャラリーナユタ、小さな空間だが、いろんなものを包みこむ場のようである。
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「毎年12月は、アール・ブリュットの展覧会をやっているのです」、とオーナーの佐藤香織さんは言う。で、「12の月のおくりもの」なんだ。
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障害のあるアーティストたちの工房集とのコラボらしい。
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ギャラリー内の左側。
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足立直久「山シリーズ」。
「この作品、マーク・ロスコのようでしょう」、とオーナー・佐藤香織さんは言う。「あぁ、そうですね。今年、久しぶりで佐倉のロスコルームへ行ってきました」、と応える。「あそこはいいですね」、と佐藤香織さん。暫らく佐倉のDIC川村記念美術館のことを話しあう。
このようなこと、とても心地よい。
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足立直久≪鋸山≫。
色づかい、ロスコを思わせるか。
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この作品も面白い。
上の作品の一部を抜き出すと・・・
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鶴岡一義≪Untitled≫。
色彩が素晴らしい。立体上部の折れ曲がり具合も絶妙。
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これは、大澤慧≪Untitled≫。
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厚紙に貼ったテープに書いている。
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河原温を思った、河原温の「日付絵画」を。
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ほっこりする。
鶴岡一義≪Untitled≫。
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こういうパネルがあった。
写りがよくないが、<みんなと仲良くしたい。一緒に笑いたい。私だけでなく、みんなを大事にして欲しい。安心して暮らしたい。・・・。・・・>、と記されている。
工房集のウェブサイトを見てみた。
福祉施設での表現プロジェクトであるが、こういうことも記されている。
<法人全体で150名ほどが仕事としてさまざまな表現を生み出している。・・・>、と。
驚いた。埼玉県の川口にある工房集、150人もの障害を持つ人たちが、仕事として絵を描いたり、立体作品を作ったり、織物をしたり、字を書いたりしているんだということに。
「12の月のおくりもの」展は、ギャラリーナユタと工房集のコラボであり、作品毎のラベルにも「Gallery Nayuta + Kobo Syu」と記されていた。当然のことラベルにはプライスも記されており、赤丸がついている作品もある。
アール・ブリュットの世界、仕事としての表現へと様変わりしている。
ダイバーシティの時代である。障害者の社会進出、当然のことである。
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ギャラリー内、右側の壁面へ。
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片山沙也香≪Untitled≫。
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近寄る。映りこみがあるが、サイ・トゥオンブリーを思う。
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吉川千晶≪Untitled≫。
アール・ブリュットの原点ともいえようか。
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ギャラリーナユタで、暫らく幸せな時を持った。
辞する時、オーナーの佐藤香織さんが、「よろしければ」と言って、写真を撮ってくれた。
年越しの昨年末にも載せたが、今日は佐藤さんが撮ってくれたそのままを載せておく。宙を思わせるギャラリーナユタの小さな画廊空間に抱かれた様を。