山は深く、眠り。
日本画の目指す到達点のひとつは、静寂であろう。
佐藤希の作品、まさに静寂。音のない世界を描きだしている。
銀座奥野ビル511 ギャラリーナユタ、3月6日。
佐藤 希 山は深く、眠り。
8点の作品が展示されている。すべてが、岩絵具、水干絵具、コンテ、パステル、高知麻紙。2020年の作。
ギャラリーナユタの白い空間のメインスペースに3点。
≪山は深く、眠り。Ⅰ≫ F50号。
近寄る。
静寂。
≪山は深く、眠り。Ⅱ≫ F30号。
近づく。
静謐。
≪山は深く、眠り。Ⅲ≫ F30号。
近づく。
ンッ、音が聴こえるような気がする。が、聴こえない。静か。
≪春をたずさえて Ⅴ≫ M3号。
≪山は深く、眠り。≫とは趣が異なる。しかし、やはり繋がる。
森閑。
この壁面に残る4点が。
≪山は深く、眠り。Ⅳ≫。
≪春をたずさえて≫の1、Ⅱ、Ⅳ。
静閑。
作家の佐藤希、ムサビの大学院を出た後、2013年から2017年にかけムサビの日本画学科研究室助手となっている。
何年か前、藝大の大学院の学生と話した。その学生は、大学院を出た後、学校に残るのが大変なんです、と話していた。佐藤希、大学院を出た後、研究室の助手となっている。ムサビが優秀と認めたのであろう。
ギャラリーナユタのオーナー・佐藤香織さんがこれを持ってきた。
2016年の佐藤希の作品・≪気配≫。
これも2016年の作品・≪気配≫。
2018年の作品・≪樹々を抜けて≫。
これも同じ年の作品・≪樹々を抜けて≫。
年を経るごとに作品の深度が深まるように感じる。
それにしても、ギャラリーナユタのオーナーも佐藤さん、作家も佐藤さん、
ふたりの佐藤さん、ともに森閑とした趣きに包まれている。
山は深く、眠り。
「眠り」である。「眠る」ではない。空間に余韻を残す。
佐藤希、加山又造への道を歩んでほしいな。