アートのお値段。

昨日の『ラスト・ディール』の北欧フィンランドのオークションハウスもそれはそれで味があるのであるが、オークションと言えばやはりロンドンとニューヨーク、就中サザビーズとクリスティーズのふたつのオークションハウス。
f:id:ryuuzanshi:20191008182753j:plain]
『アートのお値段』とはベタなタイトルだが、どうしてコンテンポラリー・アート、現代美術が億単位の値段で取引きされているのか、アートと金の関係に迫ったドキュメンタリー。
あるコレクションの出品が決まり、サザビーズのオークショニアであるエイミー・カペラッツォは気合が入っていた。彼女にとってアートは売り買いされてなんぼ、商品である。「美術館は好きよ。でも、まるで墓場だわ」、と宣う。
f:id:ryuuzanshi:20191008183546j:plain
『アートのお値段』、監督はナサニエル・カーン。
アーティスト、オークショニア、ギャラリスト、キュレーター、美術評論家、そしてコレクター、それぞれの皆さんの声を紡いでいる。
そのほとんどは金がらみであるから、ウォール街のNYSEや兜町と似たようなもの。マーケットなんだ。
昨年、2019年の世界のアート市場は、674億ドル、日本円で約7兆4千億だそうだ。その内44%をアメリカが占め、次いでイギリスが21%、中国が19%、フランスが6%で、日本は遥か下。
今日、新型コロナウイルスの影響で遅れて開幕した全人代で、李克強は「習近平同志を核心とする共産党指導のもとに・・・」、というようなことを語っていたが、どこが共産党なんだ。いつも思うのだが不思議でならない。さほどの年をおかずアート市場においても中国はイギリスを抜き、アメリカとの2強対決となっていくのであろう。
f:id:ryuuzanshi:20200124150559j:plain
右の絵具がべたべたと付いた服を着ている男は、ラリー・プーンズ。商品としてのアートに背を向けた作家と言える。
左の男は、ジェフ・クーンズ。現存のアーティストとしてその作品が、9100万ドル(約100億円)で取引きされた男である。
ジェフ・クーンズ、その服に絵具などは付いていない。彼の作品は、工房で作られている。100人ほどの職人がいる。ジェフ・クーンズ、彼らに指示をして作品を作る。工房ではあるが、工場でもある。
村上隆もそうである。村上隆は会社組織にしている。有限会社カイカイキキという会社。社員は50人ぐらいいるのでは。村上隆もその作品、10億台の値をつけた。ジェフ・クーンズには及ばないが。しかし、作品は村上隆の方が素晴らしい。
f:id:ryuuzanshi:20071223121555j:plain
2007年の暮れから翌年初めにかけ、1か月間ヨーロッパの町を歩いていた。
ロンドン、老舗が軒を連ねるニュー・ボンド・ストリートにサザビーズの本店があった。
f:id:ryuuzanshi:20071223121656j:plain
サザビーズ入口左側。シーズナル・グリーティング。SOLDとして、モネの20号ばかりの作品が1850万ポンド(ポンド高であった当時のレートでは、約37億円)と記されていた。
f:id:ryuuzanshi:20071223121736j:plain
サザビーズの入口右側には村上隆のことが記されていた。
2008年2月14日、村上隆の≪RED FLOWER BALL≫がオークションにかけられる、と。
それに先立って、ニューヨークの著名画廊・ガゴシアン・ギャラリーで村上隆展が催される、と。エスティメートは、50-70万ドル。日本円で7、8000万円。
10数年前のロンドン、杖をつく身になると懐かしい。
f:id:ryuuzanshi:20200124150623j:plain
この左の作品、ステンレススチールの≪ラビット≫。ジェフ・クーンズが現存作家として、初めて100億円に到達した作品である。
f:id:ryuuzanshi:20200124150636j:plain
皆さん、現代アートに関わっている皆さん、アート市場にその思いを。
最後の最後、ニューヨークのサザビーズで、前澤友作がバスキアの≪Untitled≫を123億円で競り落とした場面が出てくる。
他人事ながら、愉快。中国に一矢報いたようで。