正倉院の世界展。

令和への代替わりの後、東博では「御即位記念」の催しが幾つか持たれた。11月16日の大饗の儀の日に触れた「天皇と宮中儀礼」もそのひとつであるが、メーンはこの「正倉院の世界」展であろう。
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東博正門前にはいつものようにバイクやチャリンコが停められているが、今回初めて今まさに停めようという人に行きあった。
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「御即位記念特別展」、「皇室がまもり伝えた美」、とも。
「今、受け継がれる悠久の美 正倉院宝物と法隆寺献納宝物の代表作を公開」、とも謳う。
正倉院はシルクロードの終着点、ペルシャ、天竺、唐、・・・などの西方の国々からもたらされた宝物が、ということは知っているが、その宝物自体は写真でしか知らない。
奈良へは何年かに一度は行き、たまには東大寺へも行き、校倉造りの正倉院を見ることもあるが、毎年秋に開かれる奈良国立博物館での正倉院展には行ったことがない。
正倉院の宝物、元々は聖武天皇が亡くなられた後、光明皇后が亡き夫・聖武天皇の御遺愛品をはじめとした品々を東大寺の大仏に捧げられたことに由来する、と東博のパンフにある。それから約1260年の間守り継がれてきた。
私が行ったのは、11月に入ってからであった。平成館の会場への待ち時間は1時間と出ていた。1時間はきついな、昼飯も食っていないし、と「ゆりの木」で時間を潰すことにした。「ゆりの木」でいつものように五目つゆそばを頼んだ。ホテルオークラが運営する食堂なので、ここの五目つゆそばはしつこくなくて美味い。コスパもいい。
余計なことを書いちゃったが、「ゆりの木」で暫らく休み平成館の方へ歩いた。まだ列が続いている。
立っている係の人に待ち時間を訊くと、「あっ、杖をついている人は並ばなくて結構です。あの入口から入ってください」、と言う。驚いた。「えっ、いいんですか、割りこみみたいじゃないですか」、と言ったら、「いいんです。杖の人はそのまま入っていいって決まりなんです」、と言う。
私は10月の終り頃から杖を使っていたが、東博の特別展へ杖をついて行ったのは初めてであった。
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そういう決まりである、との係の人の言葉に甘えさせてもらったが、さすがに並んでいる人たちの前を通り平成館の入口を入る時には気が引けた。
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平螺鈿背八角鏡。
唐時代・8世紀。正倉院宝物。
南の海の螺鈿に宝玉もちりばめられた鏡である。まぶしい。
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海磯鏡。
唐または奈良時代・8世紀。法隆寺献納宝物。
飛鳥・奈良時代(7~8世紀)の法隆寺の宝物、明治11年(1878年)、法隆寺から皇室へ献納された。法隆寺献納宝物と呼ばれるそれらの宝物は今、東博の法隆寺宝物館に納められている。
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伎楽面 酔胡王。
飛鳥・奈良時代(7~8世紀)。法隆寺献納宝物。
酔っぱらったペルシャの王様だ。
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蜀江錦褥残欠 表裂。
飛鳥時代。法隆寺献納宝物。
法隆寺では聖徳太子がお使いになった敷物(褥)として伝えられた、と東博ニュースにある。
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紺夾纈鉇几褥。
奈良時代・8世紀。正倉院宝物。
几褥は平安時代に途絶えた幻の染色技法。この褥はその最高傑作、と東博ニュース。
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灌頂幡。
飛鳥時代・7世紀。法隆寺献上宝物。
金属の幡は珍しい。法隆寺宝物館に入ると、大きな金属の幡が迎えてくれる。
正倉院の宝物は9000件あると言われている。その内今回東博へお出でになったのは43件。コンマ以下のパーセントである。が、選りすぐりの宝物が、ということは言えるのではないか。
「黄熱香」が来ている。いわゆる「蘭奢待」である。
ひねくれた古い木であるが、これが面白い。絶対権力者・天下人が何とかこれを、と切望した香木であるから。足利義政が切り取ったことが残されている。織田信長が切り取ったことも残されている。近場では、明治天皇もということも一説では。さすが明治大帝。
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カメラはもちろん許されていない。が、最後、ここから先だけはと記されている。
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正倉院、校倉造りのレプリカ。
天皇の使いでなければ、という勅封が見える。
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多くの人がいる先は・・・
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複製品の螺鈿紫檀五弦琵琶。
複製品であるが多くの人が写真を撮る。複製品とはいえとても美しい。西方からもたらされた螺鈿細工の五弦の琵琶。
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螺鈿紫檀阮咸。もちろん複製品。
大勢の人がいるので前へ行こうという気が起きない。離れたところから撮った。いびつになったが、仕方ない。
東大寺大仏殿が写りこんでいる。奈良である。
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森鴎外の言葉があった。
鴎外、たしか、東博の前身である帝室博物館の館長を務めていたような気がする。


音声ガイドは元NHKアナウンサーの石澤典夫であった。さすが安定感はあるのだが、いまいち響いてはこなかった。
実は私、会場内では四六時中座る。席が空かないかなーって常に思っている。席が空けば座って音声ガイドを聴いている。対象物を見ないで音声ガイドだけを聴いているということもある。だから音声ガイドは大事である。石澤典夫のそれ、イマイチであった。


腰や足の骨の方は杖を使って大丈夫なのだが、ここ暫らく、身体の中の方がまた何かおかしくなってきた。
「流山子雑録」、暫らく休みます。