バラナシ逍遥 2008年12月6日夜。

日中家に居てテレビをつけていると、ファイナンシャルプランナーという人が出てきて、支出の見直しをするにはこれこれなんてことを話している。いつの間にか、「人生100年時代」なんて言葉も生まれている。
毎月5万円を削ることが必要だそうだ。例の平均的な夫婦二人の老後、公的年金以外に2000万円が必要とのことについての対応策を彼らは語る。何を削る何を削るなんてことを。都会地から地方へ移住することも選択肢のひとつ、とも。都会地の家を売って田舎の古民家へ移住した人が、「景色もいいし空気も美味いし、ここなら長生きができる」なんてことを話している。そういうものか、と思う。
映画館もない、図書館もない、美術館もない、居酒屋さえない、そんなところへ移って「長生きできてハッピー」、なんて言っているなんて、どこかおかしい。長生きするために生きてるのかって。今回の参院選の有権者が最も重視するのは年金問題だそうだし。日本の年寄りの皆さん、100とは言わないまでも90過ぎまでは、と考えだしているらしい。いつの間にか。住居費を削って、交通費を削って、外食費を削って、・・・を削って、なんてことをやりながら。何のために生きるのだろうか。
生きるために生きるなんてオレは御免蒙りたい、と考えている。
東洋文庫の「インドの叡智」展を振り返ったこともあり、このところインドのことを考えている。またインドへ行きたいな、と。
しかし、現実は厳しい状況がある。このひと月の間でも病院へは4度も行っている。もう行くことはできない。インドへは厳しい。で、インドの痕跡を少し残しておこうと考えた。
「インドの叡智」ではなく、「インドの地」について。
インドへ最後に行ったのは2008年の12月。その間3、4日、ネパールへ入ったのも含め2週間の旅であった。幾つかの町を歩いたが、どこかひとつに絞ると、バラナシとなる。
初めてバラナシへ行ったのは30年以上前になる。夜行列車でムガールサライという駅に夜明け前、3時頃に着いた。駅の外は真っ暗闇。駅のベンチで夜の明けるのを待ち、オートリクシャーで15キロほど先のバラナシの町を目指した。ガタガタの土の道を。おっかなびっくりバラナシの町へ入った。
バラナシ(日本ではベナレスと呼ばれることが多いが)は、ガンガー(ガンジス河)に沿ったヒンドゥーの聖地中の聖地である。ステレオタイプを承知で言えば、聖と俗が混然一体となった町、また、生と死が混在する町でもある。
年金がどうとか、コストをどうカットするとか、というつまらない夢のない話を耳にしながら、もう叶わないであろうインドのことを載せたくなった。インドの地、あちこち思いはあるが、バラナシに絞り。最後に行った2008年12月のバラナシの模様を。
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10年半ほど前になろうか、2008年12月6日の夜9時すぎ、私はサイクルリクシャーでガンガー岸辺の中心部、ダシャーシュワメード・ガートを目指していた。
サイクルリクシャーは、三輪自転車の後ろを人が乗る座席にしたものである。この首に布を巻いた縦じまのシャツの男が漕ぎ手・運転手。
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バラナシの町中を進む。
牛がいる。
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どういうワケか、この時の写真、ほとんどがひどいピンボケ。
それはそれで趣がある。
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感覚として解かる。
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バラナシだ。
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ガンガー河畔のガートに近づく。
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商店が並ぶ。
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このような所がある。
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”Ganga Seva Nidhi”と記されている。
Aarti(アールティー)と呼ばれるヒンドゥーの儀式である。
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若いバラモンの僧侶が登場する。
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7、8人の僧侶が出てきたと思われる。
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煙、お香か、が立ち昇る。
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火、松明が掲げられる。
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ガンガーの水辺での儀式である。
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小さな子供がガンガーに流す花を売っている。
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戻ることにする。
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このような中を。
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このような中も。
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時間は11時前となっていた。待たせていたサイクルリクシャーでホテルへ帰る。
10年半前のバラナシの夜である。