「ビックリしてます」、と朝乃山。

このところ大相撲のそれぞれの場所については、千秋楽・楽日にしか記していなかった。今年の初場所、私が大相撲稀勢場所と呼んでいた稀勢の里の引退となった1月場所を除いて。
しかし、この夏場所は、中日にも記した。
新大関である貴景勝のことごとがあった故である。怪我を押して再出場した貴景勝、さらにそれを許した師匠・千賀ノ浦の判断力に不安を覚えたことがある。
白鵬がいない今場所、鶴竜と大関復帰を目指す栃ノ心が万全の相撲を取っていた。前日、7日目までは。
が、この二人とも中日に敗れた。玉鷲と遠藤に完璧な相撲を取られて。玉鷲と遠藤が上手かった。中日で1敗はしたが、今場所は鶴竜か栃ノ心のいずれかのものであろう、と考えていた。栃ノ心の大関復帰など、軽いものとも。それが、まさか朝乃山になろうとは。
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10日目、10勝を挙げれば大関復帰となる栃ノ心、この日も勝ち9勝1敗。残り5日でひとつ勝てば大関復帰、軽いものだと誰しもが思った。
私はそれどころか、優勝の可能性が高いな、と考えていた。
ところがである。
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11日目の上位陣の星取。
何と、横綱、大関、関脇、小結、役力士すべてが敗れ去った。記憶にない。珍らしい。
それ以上に、ここには出てこない幕内前半で相撲を取っている西前頭8枚目の朝乃山が1敗、トップに躍り出た。
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11日目を終わってこう。
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12日目、トップを走る朝乃山には優勝経験もある実力者・玉鷲が当てられる。
さすが玉鷲、朝乃山との力の違いを見せつける。
朝乃山の翌日の相手は栃ノ心。栃ノ心、10日目に9勝を挙げた後、阿炎、明生と平幕ながら生きのいい若手に2連敗している。明日あたり勝たなくては尻に火がつく。
ところが、この13日目の栃ノ心と朝乃山の一番、朝乃山が勝つ。
実は、この13日目の一番、私は出ていてリアルタイムでは見ていない。が、夜のニュースで何度か見た。微妙と言えば微妙である。しかし、栃ノ心に分がある。勝っている。
この一番、行司軍配は栃ノ心に上がったが、放駒から物言いがついた。で、ビデオ判定となった。しかし、結論は出ない。5人の勝負審判、6分近くも土俵上で協議していたそうだ。審判部長の阿武松の説明によると要約こうである。「ビデオ判定の審判はどちらが有利か判定できなかった。躊躇していた。勝負のついた目の前の審判の放駒親方は栃ノ心のかかとが砂を連れてきた、と言っている。で、栃ノ心のかかとが先に出ているので、行司差し違へで朝乃山の勝ちとする」、と。
おかしい。目の前の審判の目で決めるのならば、何のためにビデオ判定があるのか。
この一番、はっきりと意思表示をした、つまり土俵際をはっきりと見えていた親方は、放駒ひとりであったそうだ。放駒も「審判の多数決を」、と言ったそうだ。それを審判部長の阿武松は、朝乃山の勝ち、栃ノ心の負け、と断じた。おかしいよ。
勝負審判の親方衆が、土俵上で6分近くも協議しなければ決着がつかない勝負は、取り直しが妥当であろう。いわんや、栃ノ心にとってはこの勝ち負けは計り知れないほど大きな勝負である。
実は、審判部長の阿武松は、11日目にも脈絡を欠く物言い後の説明があった。朝乃山と佐田の海の一戦で。なぜ審判部の部長になっているのか。
それはそれとして、10日目に大関復帰まであと1勝としながら、その後3連敗となった栃ノ心、あと残り2日、横綱、大関との対戦となる。今の栃ノ心の精神状態では、大関復帰、ヤバくなったなと思っていた。
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今日、14日目、土俵下、控えの栃ノ心。
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栃ノ心、天井を仰ぐ。
何を考えていたのであろう。
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こちらは、今日の栃ノ心の相手である鶴竜とその前を取る朝乃山。
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結び前の一番、朝乃山対豪栄道。
平幕の朝乃山、大関との割りが組まれている。
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豪栄道も情けない。
朝乃山に寄り切られる。
これで結びの一番で鶴竜が敗れれば、千秋楽を待たず朝乃山の優勝が決まる。
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結びの一番。
栃ノ心、鶴竜にはこれまで3勝23敗。合口が悪いどころじゃない。
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が、勝負はあっけなくついた。栃ノ心、注文相撲を取った。立ち合い変化してはたき込んだ。
リプレイも流れなかった。
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すぐにNHKニュース速報が流れた故。
「平幕の朝乃山が初優勝」との。
三役経験のない力士の優勝は、1961年夏場所の佐田の山以来58年ぶりだそうだ。
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インタビュールームでの朝乃山。「ビックリしてます」、と語る。
そうであろう。
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注文相撲で勝ち、大関復帰を決めた栃ノ心、「勝ってよかった」、と語る。「今日はあんなことをして」、とも。
栃ノ心、横綱・鶴竜相手に立会いの変化などしたくはなかったであろう。しかし、今の己の精神状態で勝つためには、イチかバチかの立ち合い一瞬の変化しかない、と考えたのであろう。みっともないが、それを選択した。
それも是、である。
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豪栄道、高安の両大関もふがいない。
来場所、白鵬が戻ってきたら、また白鵬が優勝なんてことになる気配を感じる。
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大相撲夏場所、千秋楽・楽日を待たず、平幕・朝乃山の優勝で幕を閉じた。


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夕刻、エアフォース1が羽田に着いた。
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令和初の国賓は、ドナルド・トランプ。
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安倍晋三、これでもかって接待をする。