流山子雑録     『酔睡胡乱』

荻野美穂子展 -目覚めの時ー。



年に一度個展を開いている荻野美穂子、今回は2月中下旬に催された。
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京橋のギャラリー・SILVER SHELL。
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中へ。
荻野美穂子のクレパス画。
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作家・荻野美穂子の記すところによれば、子供のころ最初に学んだのは日本画であったそうだ。その後、水彩画を学んでいる。共に師事したのは日展系の作家。今の作品からはとても想像できない。が、案外このようなことあり得ることかもしれない。
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タイトルは、《過去形》。
荻野美穂子を知って5年となる。
だから、個展を観るのも5回目である。
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左は、《寄る辺》。右は、《思い出》。
以前、使っているのはサクラクレパスだと言っていた。
塗り重ね、塗り重ね、削り、削る。
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《音色》。
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正面の大きな作品は、《とばり》。
女流におしなべて言えることだが、女性作家というもの、「どうして?」ってタイトルをつける。荻野美穂子もそう。
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《薄化粧》。
たしかに。シック。
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今回展の案内ハガキにも使われている《千日》。
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《浮世ザ・ワールド》。
何というタイトルなんだ。と思うが、それよりもなんという作品なんだ。
クレパスが幾重にも塗り重ねられ、削り取られる。不思議な世界が現れる。
日展系の作家に師事し日本画や水彩画を学んでいた作家は、今、抽象絵画の真っただ中にいる。
抽象表現主義を思う。
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《華》。
ジャクソン・ポロックが浮かぶ。ポロックのドリッピングを。
ポロックがドリッピングで描いたのに対し、荻野美穂子は引っ掻き取る・スクラッチングで作品を制作した。
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今までも個展の折りには、作家の写真を載せている。荻野美穂子展の時にも。
「荻野さん、写真を1枚お願いします」と言った。作家の荻野美穂子、「しわが目立たないよう小さく撮ってください」、と荻野さん。その通りにした。この程度に。
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今までの展覧会の模様などを記録したスクラップブックがある。
今までもあった。
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が、イラストレーター時代のスクラップは初めて見る。
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雑誌その他、あちこちにイラストを描いていたそうだ。
可愛い可愛い女の子、といったイラストを。
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この左側は・・・
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コーミ(株)の缶ジュースや缶烏龍茶のイラスト。
缶へのイラスト、山本陽子がこの缶を持ったCMが、1987年から2年間放映されたそうだ。
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荻野美穂子、1980年代から90年代にかけイラストレーターをしていた模様。こういう可愛い、可愛い女の子、といった。
それと共に、水彩画を描いていたという。
その主テーマは「ヌード」であった、という。人体への思いが強いんだ、おそらく。
水彩画でヌードを描いていたのであろう。それが、ある時から変化する。画材も変化する。水彩絵の具からクレパスへ。
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この作品、どうもターニングポイントの作品のようだ。
タイトルは、《そして》。
初めて見たのは5年前。
赤いハイヒールの足と伸ばした手がお尻で繋がっている。
水彩画でヌードを描いていたのが、このように変化したようだ。
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SILVER SHELL、このスリットが面白い。
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《大和撫子》。
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《独言》。
ヌード、人体のあれこれが感じられる。
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こちらの壁面。
右側から見てみよう。
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(右)《目覚めの時》、(中)《遊ぼ》、(左)《夢見る》。
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《楽し楽し》。
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(右)《チャンス》、(中)《明日の約束》、(左)《あっちこっち》。
小品である。何を描いているのかは分からない。
が、これらの作品、どこかポロックやデ・クーニングを思わせて仕方ない。
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ギャラリーを辞する時、荻野さんは「外にもあるのです」、と言った。
小さなウインドーがあった。そこに2点の作品があった。どうしても映りこんでしまう。
荻野さんと私も映りこむ。
これはこれでまあいいか、ってことにしよう。