季節の瞬間3 2014年春 丸山則夫作品展。

荻野美穂子クレパス画展の3週間ほど後、また奥野ビルの501号室を訪れた。

手動式のエレベーターに乗って。

エレベーターの中から。

501号室、Art Space RONDOの入口。
あちこち、みな擦り減っている。

実は、その3週間ほど前、RONDOへ行った折り、そこのオーナーからこのようなハガキを貰っていたからだ。
Art Space RONDOのオーナー・丸山則夫、写真家であるという。

ギャラリーに入ると、このような挨拶を記した紙がある。
<・・・、夜明け前から自宅近辺を彷徨い・・・・・>、と記されている。
丸山さん、夜明け前にしか写真を撮らない、と言っていた。

夜明け前の様子。

”季節の瞬間”、この写真はもちろん丸山則夫の作品。
セピア色のこの写真、Art Space RONDOの凹凸のある壁に調和して、何とも言えぬ思いを抱く。”サウダージ”って言葉を思い出す。

さまざまな夜明け前。

銀座奥野ビル501号室といえば、この丸窓だ。
オッ、花の写真の前でゾウさんが歩いている。


このゾウさん、以前RONDOで、50〜60頭ばかりのゾウさんを使った展覧会をした人がいるそうだ。
その幾つかを使っている、と言う。

ライティングの妙であるが、面白い。
丸窓の左のこの壁面も面白い。

「客が一人も来ない日、ヒッツキムシでこれを作っていた」、と丸山さんは言う。
”ヒッツキムシ”とは、画廊などでタイトルなどを記したラベルなどを壁に貼りつけるペーストのことである。丸山さん、客がまったく来ない日、この人形を作り、壁に貼りつけたんだそうだ。
それにしても、さすが上手い。

ある時、カナダ人の男が入ってきた。
このヒッツキムシの人形を見て、そのカナダ人、これを作ったそうだ。ヒッツキムシで。
「そのカナダ人、私の髪の毛を切ったんですよ」、と丸山さんは言う。しかし、ツンツンとしているこの髪の毛、ホントに丸山さんのものかなー。少しツンツンしすぎているような気がしているのだが。

この写真が面白かった。
夜明け前と夜明け後の狭間である。二人の男が写っている。不思議な光景。得も言えぬ情景である。

丸山さんと話している時、時折り作品が壁から落ちた。
作品も、ヒッツキムシで壁へ貼りつけられているんだ。「乾燥しているんで」、と丸山さんは話し、その都度、ヒッツキムシで貼りつける。

夜明け前。

これも夜明け前。
このような写真を見ると、こういうことを思う。
昨年秋、モノクロのポルトガル映画『熱波』を取りあげた。リスボン、そして、ポルトガルの植民地であったアンゴラかモザンビークでの物語。Saudade(サウダージ)って言葉を思い出す。この写真を見ても。

夕刻、奥野ビルを出る。
レトロなビル、あちこちの窓の外、緑がある。