流山子雑録     『酔睡胡乱』

イケムラレイコ 土と星 Our Planet展 + α 。


ご多分に漏れずドイツでも、トランプ登場以来の「オレたちさえ良ければ」という不寛容な潮流に覆われメルケルを追いつめているが、それでもなお深みを持った国である。
大坂外大でスペイン語を専攻した池村玲子は、1970年代にスペインで美術を学び、その後スイスで美術家・イケムラレイコとしての活動を始め、1980年代初めからはドイツを拠点に現代美術作家として世界を股に歩んでいる。ドイツの深い懐の中で自らの才能を磨いたのであろう。
ドイツという国、つい先日、2年ほど前まではさまざまな多様性を認め合う国であったから。
f:id:ryuuzanshi:20190209162848j:plain
2月初め、国立新美術館での新槐樹社展へ光田節子の作品を見に行った。
細かな雪の降る日であった。
f:id:ryuuzanshi:20190209162449j:plain
地下鉄の乃木坂駅で降り、国立新美術館への通路にはこのようなポスターが貼られていた。
f:id:ryuuzanshi:20190209162542j:plain
このようなポスターも。
私はイケムラレイコという作家のことを知らなかった。しかし、何か惹かれる。直感で見なきゃならないな、と思う。
プロローグからエピローグまで16のセクションで構成されている。
例えばプロローグ、1970年代のエッチング・《生命の循環》。<生成と消滅をくりかえす大いなる節理への関心、・・・>、と説明書きにある。
言葉、物語の世界に入っていく。
16のセクションの内、4つのセクションの撮影が許されている。
f:id:ryuuzanshi:20190209180958j:plain
まずここ。
f:id:ryuuzanshi:20190209181152j:plain
セクション3の「有機と無機」。
f:id:ryuuzanshi:20190209181215j:plain
イケムラレイコ、絵画、彫刻、ドローイング、水彩、版画、写真、映像、とあらゆるメディアを用いて生成と変化の諸相を表現しているが、言葉をも加えている。いや、駆使する。造形と言語の連関、往還ということ、ドイツの懐の深さと関係があるように思われてならない。
f:id:ryuuzanshi:20190209181305j:plain
拡げて読んで。
f:id:ryuuzanshi:20190209181015j:plain
近寄る。
1980年代末から粘土を用いて彫刻を作りだしたそうだ。
粘土をこね、イメージを探る。テラコッタ。
f:id:ryuuzanshi:20190209181025j:plain
中央の作品は、《柱Ⅳ》。
f:id:ryuuzanshi:20190209181045j:plain
左側は有機かな。
f:id:ryuuzanshi:20190209181100j:plain
(左)黄色いミコを抱いたダークフィギュア、(右)立って。
f:id:ryuuzanshi:20190209181122j:plain
右側は無機か。
f:id:ryuuzanshi:20190209181131j:plain
(中央)ダブルハウス、(左)オンナイエ、(右)トゥルムヴルム(虫の塔)。
建物だものな。
「オンナイエ」なんて「女の家」、ドイツ語での言葉遊びがある模様だが、よく分からない。
f:id:ryuuzanshi:20190209182734j:plain
セクション8、「うさぎ観音」。
f:id:ryuuzanshi:20190209182615j:plain
3メートルを大きく超える《うさぎ観音Ⅱ》。
後ろに映像《いずこでもない》が流れる。
f:id:ryuuzanshi:20190209182707j:plain
2011年3月11日の東日本大震災に衝撃を受けたイケムラレイコ、祈りの「うさぎ観音」を作った。
内部は空洞である。中へ入ることができる。
f:id:ryuuzanshi:20190209182900j:plain
セクション10、「庭」。
暗くなった庭、野外展示場にも《うさぎ観音》がある。
f:id:ryuuzanshi:20190209182912j:plain
こちらの「うさぎ観音」は、両耳がピンと立っている。
f:id:ryuuzanshi:20190209182956j:plain
「うさぎ問答」。
言語である。
f:id:ryuuzanshi:20190209183628j:plain
暗闇に浮かびあがる「うさぎ観音」。
f:id:ryuuzanshi:20190209183100j:plain
今までの展覧会図録などが並ぶ。
ほとんどは英語版。次いでドイツ語、フランス語など。
イケムラレイコ、ヨーロッパ世界での活動が顕著である故、こうであるのだろう。ポンピドゥー・センターのパブリックコレクションにもなっているし。
f:id:ryuuzanshi:20190209183111j:plain
イケムラの顔貌、挑んでいる。
f:id:ryuuzanshi:20190209183137j:plain
日本語の図録がひとつあった。
f:id:ryuuzanshi:20190209185457j:plain
写真を撮ることが許されているセクションでは、このような表示がある。
f:id:ryuuzanshi:20190209185516j:plain
セクション15、「コスミックスケープ」。
f:id:ryuuzanshi:20190209185527j:plain
時空を超える。
f:id:ryuuzanshi:20190209185604j:plain
大きな作品が並ぶ。
いずれも天地190cm、左右290cm。
f:id:ryuuzanshi:20190209185552j:plain
イケムラレイコ、2010年代に入って、東洋のアニミズム的世界観に彩られた大画面の山水画に取り組んでいる、という。
f:id:ryuuzanshi:20190209185912j:plain
(左)《始源Ⅱ》、(中)《始源Ⅲ》、(右)《コロニア》。
テンペラ、ジュート。
f:id:ryuuzanshi:20190209185650j:plain
こちら、左の方へ。
f:id:ryuuzanshi:20190209185536j:plain
色彩を持った水墨画の世界、と思える。
《うねりの春》3部作。
f:id:ryuuzanshi:20190209185748j:plain
左。
f:id:ryuuzanshi:20190209185728j:plain
中央。
f:id:ryuuzanshi:20190209185838j:plain
右。
春、芽生え、命が動く。今の季節か。春の幽玄。
f:id:ryuuzanshi:20190209185623j:plain
《ツァラトゥストラⅢ》。
f:id:ryuuzanshi:20190209191241j:plain
国立新美術館を去る時のモニター。このような画面も現れた。
イケムラレイコの彫刻作品である《頭から生えた木》。
不思議な作品である。
が、今も頭の片隅に留まり続けている。
それにしても、ドイツという国は深い、分厚い。
イケムラレイコもそのドイツがあってこそであろう。ドイツ、心が広いんだ。ここ1、2年は怪しくなってきたとは言え。
少し脱線をする。
去年は取り止めとなったが、毎年ノーベル文学賞の季節となると、ハルキストと言われる人たちがワインなどを用意して待ちかまえている。今年こそ、村上春樹がノーベル文学賞を取る、と。
私は、そうは思わない。以前にも記したが、村上春樹とノーベル文学賞、親和性が悪い。
もし、次の日本人のノーベル文学賞があるとしたら、それは多和田葉子ではないか、と思っている。多和田葉子もドイツが育てた作家、クリエイターである。
多和田葉子に関しては、何年か前記したことがある。
多和田葉子の著、3冊読んだ。
『光とゼラチンのライプチッヒ』は、歯が立たなかった。『雪の練習生』は、不思議な物語りであったが面白かった。『エクソフォニー』は、引きずりこまれる物語であった。
多和田葉子は突き抜けているな、という思いを持った。だから、次のノーベル文学賞の日本人作家は、村上春樹ではなく多和田葉子ではないか、と。


だいぶ前から大相撲春場所・大坂場所が始まっている。
f:id:ryuuzanshi:20190310151439j:plain
初日、役力士を従えての理事長・八角の挨拶。
f:id:ryuuzanshi:20190310151404j:plain
今場所の目玉は、貴景勝の大関取り。
貴景勝、今日は負け、明日千秋楽に大関取りがかかる。対する相手はカド番大関・栃ノ心。こちらも必死。どうなるか。


内田裕也が死んだ。
昨秋、樹木希林が死んだ時の映像でも永くはないな、という感じであった。
崔洋一の監督デビューも内田裕也があってこそだったそうだ。名曲・「大阪で生まれた女」の誕生も内田裕也あってこそ、ということだそう。プロヂュース力がすこぶるあった男なんだな。 ロックンロール。


竹田恒和がJOCの会長を退くことを表明した。IOC委員も。
竹田恒和、身柄拘束の恐れもあるから海外へは出られない、という。
竹田恒和、竹田宮の後裔。旧宮家である。お公家さんである。そのお公家さんを操った取り巻きがいるであろう。JOC、そいつを排除しなければ。


一昨日、イチローが引退した。
50歳まで現役と言っていたが、45歳で。十分である。さまざまな記録を残した。
昨日、シアトルへ帰っていった。
日本政府は国民栄誉賞の検討を始めている。過去2回固辞しているイチロー、今回は受けるであろう。


今日、三陸鉄道リアス線が全線開通した。
宮古から釜石まで。
3年半前には、宮古から釜石、バスを乗り継いでであった。三陸鉄道で繋がってよかった。しかし、問題はこれからである。三陸鉄道、地元住人だけの利用では採算は取れない。観光客が来ないことには。国民みんなで三陸沿岸へ行くことが必要である。
あなたも、よろしく。