病牀五輪(10) LS北見。

郄木菜那が金メダルをとった後、なんとカーリング女子でLS北見が銅メダルをとった。
忙しい日であった。
中央に日の丸があがるスケート女子マススタートの郄木菜那の表彰式を見て、チャンネルをカーリング女子3位決定戦に切りかえた。2月24日夜10時半を少し過ぎていたころであったであろうか。

イギリスとの3位決定戦、すでに最終盤10エンドに入っていた。
日本が4対3でリードしている。イギリスが残り3投、日本の残りは2投、という状況だ。ハウスの中には、黄色の日本のストーンが入っている模様。

イギリスのサードが投げ、ハウスの中はこうなった。
ナンバー1ストーンは赤のストーン、イギリスだ。

日本のスキップ・藤澤五月、ストーンを投げる。

ハウスの中、こうなった。
ナンバー1ストーンは赤、イギリスのストーンである。ナンバー2、3は黄色、日本のストーン。

この後であったであろうか、イギリスが作戦タイムをとった。

日本のコーチ席。
LS北見のキャプテンであるかってマリリンとして知られたスター・本橋麻里は、リザーブの選手であるが、すっかり裏方に徹しているように見える。

日本のスキップ・藤澤五月、最後のストーンを投げた。スィープ、スィープ。

ハウスの中、こういう状態である。
ナンバー1はイギリスの赤。ナンバー2、3は黄色の日本。ここまでの得点は日本が4対3でリードしている。
イギリスはどうするか。
手堅くナンバー1ストーンを残し1点を取り、延長戦に持ちこむか、或いは日本のナンバー3ストーンをはじき出すと共に、自らのストーンはハウス中心部に残し、ナンバー1、2をとって一挙に逆転するか。
イギリスの選手のブラシが日本のナンバー3ストーンに当てられている。イギリス、後者を選択し、このストーンをはじき出す戦術を実行した。
しかし、百戦錬磨のイギリスのスキップのスローはミスッた。失敗した。

はじき出すはずであった日本の黄色のストーンが、ナンバー1ストーンとして残った。

この瞬間、日本は5対3で勝った。

格上のイギリスを破り、3位、銅メダルをとった。

マリリンも藤澤も吉田姉妹も他の人も、皆涙。

それにしてもLS北見って何なんだ。
初めは「LS」を「SL(蒸気機関車)」と間違えていた。
「LS」ってのは、”Loco Solare”の頭文字ということらしい。
じゃあ、”Loco(ロコ)”って何なんだ。「常呂っ子」ってことだそうだ。”Solare”はイタリア語で「太陽」という言葉。
つまり、「LS北見」は、「太陽の常呂っ子」という意味なんだとか。
「そだねー」ばかりじゃなく、北見や常呂が知られたのは嬉しい。それ以上に意味がある。
北見、まして常呂は日本の北のはずれである。オホーツク沿岸である。
厳冬期のオホーツク沿岸へは2度行ったことがある。2度目は、15、6年前か20年ぐらい前になるか、網走に流氷を見る砕氷船に乗りに行った。
が、網走に宿が取れず、北見の宿から2、3日、網走へ電車で通った。
途中の駅で若い男や女の子が1人、2人、電車に乗ってくる。彼ら彼女らはこの地方では都会である網走や北見に遊びに行くんだ。とても愛おしく思えた。
LS北見の拠点である常呂となれば電車も走っていない。網走からのバスも1日何便という田舎。
その常呂、北見が日本を代表してオリンピックで銅メダルをとった。
マリリンにしろ藤澤にしろ吉田姉妹にしろ、そのようなオホーツクの地で育った人たち。
愉快、愉快。
嬉しくてしかたがない。