病牀五輪(9) その一瞬。すばやかった。

根が続かなくなった、堪え性がなくなった、ということを感じる。酔っちゃったな、面倒だなってすぐ休んでしまう。パラリンピックも最終盤を迎えているというのに、このブログ、オリンピックの方もまだ終わらない。
何年か前、慶應病院を定年退職し、四六時中アメリカ大陸を東から西へ、北から南へと車で走りまわり大リーグがらみの土地を訪れ、そのことを書いている向井万起男、雨が降ろうが槍が降ろうがそんなことはお構いなし、世の倣いなんてことはどうってことなし。
私のブログもその向井万起男風になってきたかもしれない。世の倣いなんてことは思わずにって点で。
で、あと少しピョンチャン五輪を続ける。
ピョンチャン五輪、最後の最後で驚いた。
高木美帆のオネーちゃん・郄木菜那が、なんと金メダルを取った。スケート女子マススタートで。

スケート女子マススタート、決勝に進んだのは16人。

マススタート、1周400メートルのリンクを16周する。
初めの内はゆっくりと滑っている。

終盤である。
残り2周程度であろうか。
青にオレンジのユニフォームの選手はオランダのイレーネ・スハウテン。その後ろにピタッとついている黒っぽいユニフォームの選手は日本の郄木菜那、その後ろの青いユニフォームの選手は韓国のキム・ボルム。
この3人、パシュートのように3人ピタッと並んで滑っている。

ここでは6人パシュートと言えるのでは。
左から2人目オランダのスハウテン、3人目日本の郄木菜那、4人目韓国のキム・ボルム。

最終周の最終コーナー。
先頭オランダのスハウテン、次いで日本の郄木菜那、その後ろにピタリと韓国のキム・ボルム。
この3人、蘭日韓3か国パシュートのように滑る。パシュートと異なる唯一のことは、風よけである先頭交代がないことである。先頭は常にオランダの選手でここまできた。

最終コーナー、先頭のオランダの選手が少し外へふくらんだ。
オランダの選手のすぐ後ろにつけていた郄木菜那、その一瞬を見逃さなかった。すばやかった。
内をついてスパートした。
郄木菜那のすぐ後ろについていた韓国の選手・キム・ボルムもスパートしたが、郄木菜那には一瞬遅れた。

郄木菜那、その一瞬を捉えた。すばやかった。ゴールを駆け抜けた。

郄木菜那、手を突きあげる。

優勝郄木菜那、2位韓国のキム・ボルム、3位オランダのスハウテン。

優勝した郄木菜那、日の丸を纏う。

が、その時である。2着に入った韓国のキム・ボルム、氷に突っ伏し土下座する。
どういうことか。
実は、スケート女子パシュートの時、キム・ボルム後ろの走者を置き去りにし、なおかつその選手に責任を擦りつけている、と言って韓国国民から猛バッシングを受けているらしい。
それ故のこの状況。

表彰式。
中央に日の丸があがる。

準優勝の韓国のキム・ボルム、表彰式でもこの表情。終始下を向いている。
優勝と3位の選手は笑っているのに。

アリーナ内、郄木菜那の映像が次々と流された。郄木菜那の映像が次々と。
アリーナ内の巨大なモニターにも。
その一瞬、すばやく捉えた郄木菜那、高木美帆のオネーちゃんから脱皮した。
郄木菜那となった。