ハッピーエンドの選び方。

昨日ドナルド・トランプが訪れていたエルサレムの老人ホームに、ヨヘスケルという名のじいさんが入っている。ヨヘスケル、人々の役に立つというか、喜ばせる道具を発明するのを趣味としている。
イスラエル映画である。珍しい。

「”イスラエル版”『おくりびと』」と記されているが、それは少し異なる。
本木雅弘が扮した『おくりびと』の主人公は納棺師。死した人を敬意を持って天へ送り届ける、というものであった。それに引きかえ本作の主人公・ヨヘスケルは、自分の最後を自分で選び天国へ、という道具の発明を成すこと。自分らしいハッピーエンドを望む人に。
死後のおくりびとではなく、死前から死へのおくりびと、と言うのが正確かもしれない。

『ハッピーエンドの選び方』、脚本・監督は、シャロン・マイモンとタル・グラニットの二人共同作。
主人公のヨヘスケルに扮する役者は、イスラエルでは知らぬ者がない俳優だそうだ。

ヨヘスケルの相関図、といえようか。
実は、元はと言えばヨヘスケル、望まない延命治療に苦しむ親友のマックスから、安らかに死ねる装置というか道具を発明してくれって頼まれるんだ。
で、ヨヘスケル、自ら望む時に自分でボタンを押せば自動的に薬が流れ、安らかに死につくことができる装置というか道具を発明する。老人ホームに入っている仲間たちの助けもえて、マックスは安らかに旅立つ。
ことは秘密裏に進められたのだが、私にも私にもという声が次々に寄せられる。ついにはイスラエル中にヨヘスケルの発明品は知れわたってしまう。ヨヘスケルのもとには、イスラエル中から依頼が殺到する。
安楽死ができる装置、自らの最後を自らが選ぶことができるのだから。
昨日の92歳のパリジェンヌ・マドレーヌは尊厳死を望み果たしたが、エルサレムの延命治療に苦しむ老人・マックスは安楽死を望み果たす。ヨヘスケルの発明した装置によって。
ところで、尊厳死と安楽死の問題があるよなー。
今現在、スイスでは安楽死が認められている。オランダ、ベルギー、ルクセンブルグでは医師の処方があれば認められているそうだ。アメリカの幾つかの州でも。
尊厳死と安楽死、まったく異なるものであるが、不可分なものであるのも事実。
尊厳死を望む私、尊厳死の前提として安楽死があるのかな、と漠然と考える。

それにしても、エルサレムの老人ホームに入っているヨヘスケルという名のじいさん、凄いものを発明した。