グランドフィナーレ。

インドのぼろホテルに長期間滞在している元気印のイギリス人のジジババがいるかと思えば、スイス・アルプスの高級ホテルで時を過ごしている年寄りもいる。
80歳前後と思われる主人公のフレッドもイギリス人である。世界的な作曲家で指揮者でもあるフレッド、世を捨てた日常を送っている。アルプスの高級ホテルで。サーの称号を持つ、やはりイギリスの名優・マイケル・ケインが扮する。

「老い」をどう受け入れるのか、「老い」とどう向きあうのか、避けては通れない。
華々しい過去を持つ人も、平々凡々の人生を送ってきた人も、みな等し並みに。

監督のパオロ・ソレンティーノ、フェデリコ・フェリーニの再来だとの声もある。
確かに重層なる重厚感、深く重い感がある。フェリーニを思わせる。

スイス・アルプスの高級リゾートホテル。

このような皆さんが滞在している。
世を捨てた世界的作曲家であり指揮者であるフレッド(中央)。フレッドの許には女王陛下の特使が何度も訪れる。フィリップ殿下の誕生日にフレッドの作品「シンプル・ソング」のタクトを振ってもらいたい、と。フレッドは断る。が、女王陛下の特使は何度も何度も来る。
そのフレッドの50年来の友達であるアメリカ人映画監督のミック(左端、ハーヴェイ・カイテルが扮する)。フレッドの娘・レナ(左から2番目)、何時になってもヒットした映画の役名でしか呼ばれないことに悩んでいる俳優・ジミー(右端)、さらにマラドーナに似た太った元サッカー選手や全裸でプールに入ってくるミス・ユニヴァースも。
何と言ってもジェーン・フォンダが扮する女優・ブレンダ(右から2番目)の存在感は凄い。
実は、アメリカ人映画監督のミック、若いスタッフと共に、自身最後の作品となる「人生最後の日」という映画のシナリオを練っている。ヒロインに思い描いているのは、50年を超えるつき合いのブレンダである。しかし、ブレンダからは断られる。それどころか、「あんたの直近の3作は、みなクズだ」と罵倒される。
それにしても、共に80近い年齢のミックとブレンダの会話、並みの神経ではない。ハリウッドで5、60年の長きにわたり生きていくには並みの神経では生き残れないのであろう。

アルプスの高級リゾートホテルでの物語。

フレッドとジミー、老いと若さについて語る。
グランドフィナーレ(大団円)というタイトルのこの映画の原題は、YOUTH。若者、若さである。
ああ、何たることか。

ブレンダに出演を断られ罵倒されたミックは、自死する。ああ。
女王陛下の特使を拒み続けたフレッドは、最後にはその要請を受ける。フレッドが作曲した名曲・「シンプル・ソング#3」をBBC交響楽団を指揮し演奏する。
濡れるような真っ赤な口紅のスミ・ジョーの歌声が響く。
典型的な東アジア人である韓国出身のスミ・ジョーの歌声、マリア・カラスにも比肩すべき圧倒的な存在感を持つ。
『グランドフィナーレ(大団円)』であり『YOUTH(若さ)』という原題を持つこの作品、重層、重厚な「物語」の世界を紡ぎ出している。


夜、ニュース速報が流れた。
アメリカ国防長官であるマッド・ドッグ(狂犬)と言われるマティス、尖閣には日米安保条約が適用される、と。
こんなことがニュース速報か。
それはともあれ、マッド・ドッグ・マティス、トランプ政権の中では最もまともな人物だそうだ。
それにつけてもお騒がせのトランプである。
白人労働者層に受けのいいポピュリズムの極みの大統領令を連発している。自己中のことばかり。
一週間後にトランプと会う安倍晋三、アメリカで70万人の雇用創出なんて言っている。4500億ドル(約51兆円)の市場を創出して、と。
今週初めの連夜、NHKBSの夜遅い番組でドナルド・トランプの来し方を見た。
ドナルド・トランプ、自らのことのみ、他者のことは認めない。このこと、若い頃から終始一貫している。
やなヤツだ。しかし、アメリカ国民が選んだのだから仕方がない。
安倍晋三、一週間後、トランプに対し決しておべっかは使ってくれるな。