ダリ展。

世の中には、たしかに天才がいる。
レオナルド、ミケランジェロ、ピカソ。近場ではアラーキーや赤塚不二夫。サルバドール・ダリも、まさしくそのひとり。

9月初め、郊外の畑の前にダリ展の看板が。東京ではなく千葉郊外。さすがダリって感じ。

11月下旬、地下鉄乃木坂駅構内のダリ展のポスター。
扱われている作品は、≪ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌≫。1945年に描かれている。
第二次世界大戦中、アメリカに亡命していた状態のダリ、1945年8月6日と9日の広島、長崎への原爆投下に衝撃を受けた。作品中央の傾いだ頭の中に描かれているのは、原爆を落としたエノラ・ゲイである。
ダリには不似合いにも思われるが、こういう一面もあったんだ。

乃木坂の国立新美術館の屋上に、大きな卵が乗っている。フィゲラスのダリ劇場美術館を摸したらしい。
丁度10年前、まだ独身であった娘を連れスペインへ行った。マドリードとバルセロナへ。8日間の旅であったが、二つの町には実質3日程度ずつ。半分は一緒に行動したが、半分は私はひとりで歩き、カミさんと娘は二人で買い物などに行っていた。
バルセロナで私は、フィゲラスへ行こうかどうかと悩んだ。フィゲラスのダリ劇場美術館へ行こうかどうか、と。フィゲラスへ行けば1日とられる。悩んだ末に諦めた。
サグラダ・ファミリアやカサ・ミラその他、ガウディの幾つかは巡らなければならない。また、バルセロナはジョアン・ミロの生まれ在所でもある。ミロ美術館へも行かねばならない。ピカソ美術館もある。カタルーニャ美術館(素晴らしいロマネスク美術があふれていた)へも行かねばならない。フィゲラスへは行けなかった。

今回、そのフィゲラスのガラ=サルバドール・ダリ財団とフロリダのダリ美術館、マドリードの国立ソフィア王妃芸術センターからそのコレクションが来ている。

「完璧を恐れるな」って、ダリ、あなたは完璧すぎるよ。

パンフを広げる。
≪奇妙なものたち≫。
板に油彩、コラージュ。

≪引出しのあるミロのヴィーナス≫。
白く塗られたブロンズ、白てんの毛皮の房。

≪ポルト・リガトの聖母≫。
ダリ、1929年に詩人・ポール・エリュアールの妻であるガラと出会う。ダリが25歳の時である。その時ロシア生まれのガラは10歳年上の35歳。が、ダリとガラは惹かれあい、結婚。それ以降、ガラは、ダリのミューズとなる。
”DALI de GALA”となる。「ガラのダリ」である。ガラ、若くていい男と見るや浮気を繰り返し、ダリを裏切るのだが。思うに、そんなことは、さしたることではなくなるのかもしれない。ダリにとっては。聖母だもの。
なお、ダリ、1929年にはルイス・ブニュエルと共に映画「アンダルシアの犬」を作る。会場にはその映像も流れている。何度か見た映像であるが、やはり刺激的。

≪ラファエロの聖母の最高速度≫。

≪謎めいた要素のある風景≫。
ダリ、多くの先人の影響を受けている。フェルメールからも。
画架を立て絵を描いている手前の男、フェルメールが乗り移ったダリではないか。

竹中直人による音声ガイドは、私にはいただけなかった。ああいうのが好きだって人もいるのだろうが、私にはどうも。
会場の出口付近にこういうものがあった。ここだけは、写真を撮ってもらってもいいですよってもの。
メイ・ウエストは、1920〜30年代に一世を風靡したハリウッドの女優だそうだ。

メイ・ウエストなんだろう。

並んで待つ。

若い二人連れが。

ジジイの私も一枚だけ。