憎しみと赦し。

昨日はアメリカ国立太平洋記念墓地や日本人墓地などへ参った安倍晋三、日本時間今朝早く、いよいよバラク・オバマと共に真珠湾のアリゾナ記念館を訪れた。
日本の現職総理大臣とアメリカの現職大統領が、そろって真珠湾を訪れるのは初めて。
慰霊のため。謝罪ではない。この点、この5月に広島を訪れたバラク・オバマとよく似た状況である。
アリゾナ記念館での慰霊のための長い黙祷の後の演説、共に15分ほど。両者とも固い表情で所感を述べた。安倍晋三は、「和解の力」を何度も語り、バラク・オバマは一か所「オタガイノタメニ」、という日本語を語った。
このニュース、今日何度か見たが、最初は昼のNHKニュースでのもの。

真珠湾アリゾナ記念館での両者、固い表情を崩すことはなかった。
安倍晋三には、外務大臣の岸田文雄と防衛大臣の稲田朋美が同道している。駐日アメリカ大使・キャロライン・ケネディの顔も見える。

アリゾナ記念館の対岸に設けられた演説台で、安倍晋三、日本国総理大臣としてこう語る。
パールハーバーを和解の象徴として記憶し続けられることを願う、と。その後、前列にいた75年前の12月8日、パールハーバーで日本軍の攻撃にあった100歳に近い老兵に語りかけ抱擁する。5月末、広島で原爆被災者の老人をハグしたバラク・オバマを思い出す。広島の老人と同じく、ハワイの老兵も感激していた。
日米和解の儀式といえば、そうである。
そうではあるが、安倍晋三の演説、一語一語噛みしめるように語り、なかなかのものであった。良かった。
アメリカ国民にとって、パールハーバーは決して忘れてはいけないことである。「リメンバー・パールハーバー」であり、卑劣なジャップを忘れるなである。「
10年以上前になるが、『パール・ハーバー』というタイトルのアメリカ映画があった。いや、ひどい映画であった。
米国時間1941年12月7日、パールハーバーへ宣戦布告もなしに奇襲をかけた卑劣できたないジャップ、真珠湾の艦艇ばかりか、ホノルルの民間人にも容赦ない機銃掃射を浴びせる。
それ以来、ジャップ・日本人は憎しみの対象だ。今年、ドナルド・トランプを大統領に選んだアメリカ国民には、今でも高い比率でこのようなことを思っている人がいるのでは。
いずれにしろ、憎しみを赦すことはとても難しい。
今年の映画で言えば、反日であるとして公開が遅れたアンジー(アンジェリーナ・ジョリー)の監督作『アンブロークン・不屈の男』も、太平洋戦争の憎しみと赦しを描いていた。
夏頃の『ヒトラーの忘れもの』も憎しみと赦しを描いていた。1945年5月、ドイツは降伏する。が、デンマークの海岸には200万個のドイツ軍が敷設した地雷が残されている。その除去にドイツ軍の少年兵が使われる。デンマークの人たちにとっては憎んでも憎みきれないナチスドイツの兵隊なんだから。その過程で半数以上の元ドイツ兵は死んでいく。ナチスドイツの兵隊、憎しみの対象である。が、この映画では赦しの感情も。
今朝の安倍晋三とバラク・オバマの行動、とても良かった。「日米同盟の深化」とメディアは報じている。
それよりも私には、バラク・オバマの演説の中に、「・・・、米国史上で最も輝かしい部隊の一つが、日系米国人2世の第442連隊や第100歩兵大隊だったのだ」、という一節があったことである。
第442連隊については、それを扱った映画について、この雑ブログでも記したことがある。
『442日系連隊 アメリカ史上最強の陸軍』。涙なくしては見ることができない映画であった。「ゴー・フォー・ブローク」、死を恐れず突き進んでいった。日系の第442連隊は。
何故か。
1941年12月7日のパールハーバーがあったからである。
安倍晋三、ダニエル・イノウエの墓にも参っている。
ダニエル・イノウエ、米国上院民主党の重鎮であった。第二次世界大戦のイタリア戦線で右腕をふっ飛ばされて失くした。
卑劣なジャップとして、憎しみを受けている日系人であるからこそ、死を賭して赦しを請う、心であったであろう。
バラク・オバマ、その心を酌んでくれた。