吉備の国アート巡り(27) 直島銭湯 「I💛湯」。

<そして「はいしゃ」が完成した翌年、・・・・・、福武さんから連絡がありました。で、いきなり「銭湯には興味はあるかい?」と。最初は富士山の絵のようなペンキ絵を描くのかなと思っていたら、「いや、つくるんだ」と。「I💛(アイラブ)湯」はぼくと銭湯を結びつけるという、その発想に尽きると思います>。
以前記した福武總一郎、安藤忠雄ほかの共著『直島 瀬戸内アートの楽園』(2011年 新潮社刊)にある大竹伸朗「島の人々と記憶とアート」の記述から引いた。
直島銭湯「I💛湯」、宮浦港からすぐ。「赤い刺青の男」記念館からもすぐ。いずれも徒歩数分である。

この先、高いヤシの木のようなものが見えている。
あそこだな。大竹伸朗の≪直島銭湯「I💛湯」≫は。

おー、大竹ワールドだ。

「直島銭湯」。

「I💛湯」。

大きなヤシの木だ。
青空に「ゆ」の文字が浮かぶ。

まだ日中である。
が。ネオン管の「ゆ」の文字には、すでに灯が点いている。

入口へ。

入口のガラス戸には、左に「直島銭湯」、右に「I💛湯」と書かれている。
入口の右側には、両替機と自販機がある。風呂代などはこの自販機で買う。

風呂代は大人510円(直島町民は310円)、子供210円。タオル310円、せっけん540円、お風呂4点グッズ(シャンプーなどが入っているらしい)1030円である。タオルなどは、自販機から出てきた紙片を番台に出せばそれぞれのものを渡してくれる。
なお、自販機にはパンツ・ショーツ1230円、Tシャツ3090円、トレーナー5000円のボタンもあった。それどころか、風呂おけ2060円のボタンまである。
自宅の風呂で使うため、直島から「I💛湯」の風呂おけを持ち帰ろうという輩、これぞ真の大竹ファン、と言えよう。

右側の人は何か買っている。左側のお嬢さん2人組も。
私は、風呂代とタオルのみを買って風呂に入った。まだ早い時間故、客は少なかった。きれいな風呂である。
当然、風呂の中も大竹ワールド、大竹伸朗の世界である。
風呂場の壁はペンキ絵ではなくタイル絵。富士山や三保の松原でなく、タコやなにかが泳ぐ海の底のような絵が描かれている。が、何より驚いたのは、男湯と女湯の仕切りの上。大きな象さんが乗っているんだ。
この象については、前掲の書の中で大竹伸朗、こう記している。
<・・・・・、象。これは北海道の定山渓秘宝館の入口にいたものです。こいつが要だなと思いました。「なんで象なんですか?」と言われても、もう最初にこれだったんです>、と。
どうのこうのってことじゃないんだ。もうこれってことなんだ。これぞアーティストっていうことだろう。

風呂から出て、今一度≪直島銭湯「I💛湯」≫の外側を見る。
角には、このようなものがある。ペンギンがいて、タイルの水槽の中には金魚が泳いでいる。金魚、今を生きている。
平面であれ立体であれ、さまざまなものをスクラップする大竹伸朗の作品には、いつも時間を感じるのであるが、金魚の命、拾ってきた過去のみでない未来の時間を思わせる。

側面を。
ゴールデンボール・金鯱がある。このサボテンもとても生命力が強い。大竹伸朗が意図していたかどうかは知らない。が、未来の時間。

大竹伸朗、オオタケシンロー・・・

しているなー。

≪直島銭湯「I💛湯」≫。

直島銭湯「I💛湯」で310円で求めたタオル。直島銭湯「I💛湯」で使ったのみ。
今、家の風呂で使っているタオルがくたびれてきたら、これに切り替えよう。