吉備の国アート巡り(19) 家プロジェクト「南寺」。

直島の家プロジェクトのテーマは、使われなくなった町家を改修しそれと現代アートとのコラボレーションが基本。
が、「南寺」は異なる。
ジェームズ・タレルの作品を設置するため、安藤忠雄が建物を設計、新築した。

安藤忠雄の手になる「南寺」、外壁はすべて焼杉板が用いられている。
安藤忠雄には珍しい木造建築である。

ジェームズ・タレルの作品・≪バックサイド・オブ・ザ・ムーン≫が設置されている。
ジェームズ・タレル、ベネッセ・アート・サイトの地中美術館の3人の作家のひとり。光の作家である。
光と闇は相反するものなのか。それとも同質のものと言えるのか。「南寺」の中に設置されている≪バックサイド・オブ・ザ・ムーン≫、真っ暗闇なんだ。極限まで光量を減じていった先、それが闇というものなのか、なんてことを考える。

建物の中には、15人程度ずつ入る。
だから、自ずと予約制になる。

直島のあちこち、バイクで回っている人も多い。

「南寺」の裏、バイク置き場、駐輪場となっている。

バイクが並ぶ。

「南寺」の裏、小さな広場でもある。

すべり台もある。子供たちが遊んでいる。
私は、ベンチに座って「南寺」へ入る時刻を待った。

「南寺」が建っているこの一帯、昔から神社仏閣が多いところであったそうだ。
この小さな広場にもお堂があり、その周りには小さな石仏、路傍の仏さまが幾つも見られる。

私の順番となる。
入口に並ぶ。
建物の中へ案内される。
中は真っ暗。指示する声がする。壁をつたったりしながら恐る恐る動く。しかし、次第に動けなくなる。動くのが恐くなる。
10分か15分ぐらいであったろうか、ジェームズ・タレルのインスタレーションは終わる。
ジェームズ・タレルの光の作品、「南寺」のそれは地中美術館のそれをはるかに上回ったものであった。光の作品というより、まったくの闇の作品だ。終わった後も動くことができずじっとしていた。係の人が手を取って出口へ導いてくれた。
ジェームズ・タレル、光りの作家なんであろうが、闇の作家でもある。

子供たちが出てくる。
彼らの方が、真っ暗闇藝術に順応できるんだ。おそらく、きっと。