奥宣憲書作展。
昨夜晩く帰ってきたら大きな封筒が届いていた。差出人は、従兄弟の連れあい。何人もの孫に囲まれているおばあちゃんだが、アグレッシヴな女性である。
奥宣憲の書作品集が入っていた。今夏、原田の森ギャラリー(兵庫県立美術館王子分館)で催された「日本のこころと美 第15回展」の記念作品集。
昨年、「日本のこころと美」の第14回展が東京でも催された折り、第10回記念展の作品集を頂戴した。今回の作品集は、その後5回の作品展の集大成である。
奥宣憲、巻頭の挨拶の中でこう記している。
<初の個展以来、「日本のこころと美」をテーマに、伝統を守りながら漢字とかな文字との融和を試みて、日本の書をただ一筋に歩んでまいりました>、と。
その幾つかを複写してみる。
(右ページ)
遠方な可ら
母
見て居
申す 本居恵勝
なお、本居恵勝は、<本居宣長の母>、と説明にある。
(左ページ)
たらちねの
母がなりたる
母星の
子を思ふ光
我を
てらせり 正岡子規
子規の歌だ。
(右ページ)
折節のうつり
かはるこそ
ものごとに
あハれな
連
徒然草
十九段 吉田兼好
(左ページ)
骸骨のうへを粧て花見かな 上島鬼貫
<「東の芭蕉、西の鬼貫」と並び称される。鬼貫は「まことのほかに俳諧なし」の悟りを開く>、と奥宣憲の説明文。
この記念書作品集に「個展15周年を祝う」という文章を寄せている全日本美術新聞社代表、美術評論家協会会員の松原清の祝文の一節にこうある。
<・・・・・、釈文はもちろんのこと、出典にまで及んだ解説付きの図録は、他にあまり例がなく、それだけ、作品制作ー1点にかける思いーの強さが伝わってくる。・・・・・>、と。
確かに、奥宣憲の注釈、解説は面白く、知的好奇心を満たしてくれる。
押さえるべきところは押さえながら、柔らかくもあり、と。
右ページは、高浜虚子の句、
此方へと法の御山の道をしへ
左ページは、種田山頭火の句
何を求める風の中ゆく
左右両ページの文章、読みづらい故、その部分のみを複写する。
右ページ。
左ページ。
大きな封筒には、このパンフレットも同封されていた。
先週末から今月いっぱい催されている、奥宣憲の書作展の案内。
”川端康成が惹かれた京都 源氏物語の世界”、とある。
奥宣憲、華やかな料紙に源氏物語の世界を、筆で挑んでいる模様。
大阪茨木市の川端康成文学館で今月末まで開かれている。
関西にお住まいの方、また、源氏の世界、優美な筆に惹かれるお方は是非に。