大相撲夏場所千秋楽 時代は動いた。

今場所は、ゆっくりと相撲を見ることができなかった。中入りの後半戦を何日か見た程度。
千秋楽の今日こそはゆっくり、と3時前にテレビをつけた。まだ十両の半ば、里山が巻き落としを決めたところであった。
初日に敗れた白鵬、途中からはトップに立ち、今場所もまた白鵬、という流れになっていた。でも、しかし、しかし、という結果に。
時代は動いた。

4日前の11日目、白鵬は照ノ富士を上手出し投げで屠った。

これで、白鵬10勝1敗、照ノ富士8勝3敗となる。
残り4日で2勝の差、照ノ富士の目はなくなった、と誰しもが思った。今場所も白鵬だ、と。しかし、そうはならなかった。この後、白鵬は3敗し、照ノ富士はすべて勝ち、3敗を守り優勝。
白鵬一強時代が崩れる、という予兆を感じさせた。
たしかに、時代は動いた。

十両以下の各段優勝力士。
序二段優勝の栃乃島に思いをいたす。

栃乃島、過去最高位は三段目だそうだ。まず三段目へ戻り、幕下を目指す、と語る。しかし、栃乃島、28歳だそうである。
三段目へ戻り、幕下へいったとしても給料の貰える関取はまだ先。今日、幕内優勝を決めた照ノ富士は23歳だ。まず三段目、そして幕下へ、と語る序ニ段優勝の栃乃島は28歳。
栃乃島の厳しい行く末、思われてならない。

今日の幕内土俵入りの照ノ富士。

遠藤、今場所から大銀杏を結っている。
遠藤、先場所での大怪我をおしての出場。案の定、中日までは1勝7敗。9日目も負け、1勝8敗、負け越した。
しかし、遠藤という力士、不思議といえば不思議な力士である。その後、勝ち星を重ね、終ってみれば6勝9敗。何らかのものを持っているのだろう。

今日の逸ノ城、手刀を切っている。
中日まで2勝6敗と大きく負け越していた逸ノ城、後半盛り返し、今日の勝利で勝ち越した。凄いパワーを持っているんだ、やはり。
逸ノ城、まだ大銀杏が結えていない状態なんだから。やはり、恐るべしだ。

それにしても取り組は進み、土俵下の白鵬と照ノ富士。
白鵬の方が緊張しているように見える。

照ノ富士、碧山を寄り切りで破り3敗を保つ。
弟弟子・照ノ富士の様子をテレビ画面で見る安美錦の映像が一瞬流れる。兄弟子・安美錦、細い目をより細くして弟弟子の勝利を喜んでいた。

千秋楽結びの一番。
白鵬対日馬富士。白鵬が負ければ、照ノ富士の優勝となる。

白鵬、通算でも大きくリード、この1年でも、白鵬の負けはない。

照ノ富士、支度部屋のテレビを見あげる。

日馬富士、白鵬を破る。

照ノ富士、優勝だ。

照ノ富士、師匠の伊勢ヶ濱から優勝旗を受ける。

内閣総理大臣杯は、TPPで頭を絞っている甘利明から。

優勝インタビュー。
「お母さん、お父さん、それに応援してくれた人たち、親方とおかみさん、部屋のみんな、それらの人たちに感謝します」、と語る。
それにしても可愛いんだ、照ノ富士の笑顔。

照ノ富士の初優勝までは、わずか25場所。
その前後の皆さん、すべて横綱になっている人ばかり。照ノ富士が綱を張るのもそう遠くはないだろう。
モンゴルから6年前に日本へ来た少年、4年前に大相撲へ入門し、実力の世界を駈けあがっている。来場所は大関、さらに頂点も近い。
それは、目出度い。が、それと共に、今日のNHKの中入りへの待ち時間に、こういう映像が流れた。引退情報である。

元十両の出羽の郷が今場所限りで引退をする、ということである。
でも、元十両の出羽の郷、と言われてもよくは知らない。
出羽の郷、44歳だという。初土俵は1986年の夏場所。20年目、34歳で十両へ上った。が、一場所で陥落した。それから10年、今は三段目であったそうである。髪も薄くなっている。
越し方を問われ、出羽の郷、こう語っている。
「いい人生でした」、と。
そうか。そうなのか。土俵人生さまざまだな、と改めて思う。

綱を締めた白鵬の後姿。
何かを暗示していないか。

時代は動いた。
変わりつつある。