稀勢で始まり、高安がアクセントをつけ、白鵬で終わった。

一時期の白鵬、双葉山を目指していた。「後の先」なども試みて。
しかし、その強さの度合いはさておいて、心情的に双葉山に近いのは稀勢の里ではないか、と思うことがある。
今場所の稀勢の里、出場できる状態ではなかった。上腕と胸の筋肉が治りきっていない状態であった。が、出場した。おそらく、責務ということを考えたのであろう。痛めた個所は大丈夫、と言って。悪いにもかかわらず、なんでもないなどと言って。片方の視力がないにもかかわらず、それを明かさず土俵に上がり続けた双葉山にその心中が重なる。
それを周りの連中は、3連覇云々なんてことを囃したてる。稀勢の里の3連覇場所だと。
今場所、そのようにして始まった。

4日目、稀勢の里と遠藤の一番。

土俵中央で押しあうが・・・

稀勢の里、遠藤に押し出されてしまう。
稀勢の里、初日に嘉風に敗れている。これで4日目を終わり、2勝2敗。
稀勢、明らかに万全ではない。

今場所、高安の大関取りの場所でもあった。
中日・8日目の高安と嘉風の一番。

高安、動きの速い嘉風をはたきこむ。

高安、中日まで1敗。
好調だ。

先場所、手負いの稀勢の里に劇的な逆転劇を演じられた照ノ富士も初日、2日目と出遅れたが、その後は勝ち続けている。
この日も御嶽海を豪快なきめ出しで破った。

照ノ富士、中日以降も豪快といえば豪快、荒っぽいといえば荒っぽい相撲を取り、勝ち星を積みあげていった。

白鵬は、全盛期の強さはなくなった。
しかし、今場所の白鵬、「オレが勝つ」に徹していた。気合が入っていた。
1年、6場所ぶりの優勝を何が何でも、という気概にあふれていた。
中日、琴奨菊を上手出し投げ一閃、全勝ターン。

先場所、大関から落ちた琴奨菊、中日で1勝7敗、厳しい。
しかし、琴奨菊ここから頑張った。今日千秋楽15日間取り終え、7勝8敗とした。
奨菊、まだまだ力がある。

稀勢は碧山を寄り切り、中日を終わって6勝2敗。

中日を終わっての上位陣の星取表。
全勝ターンは、白鵬と日馬富士の二人の横綱のみ。高安が1敗で追う。

9日目。
高安、確かに強くなった。立ち合いのかちあげぎみの当たり、威力がある。だから、その後の投げも。

高安、9日目で勝ち越す。

稀勢の里は、栃煌山に二本差され一気に持っていかれ、敗れる。

今場所の栃煌山、完全ではない。どちらかと言えば不調である。
前日の中日、栃煌山は若手の貴景勝に敗れた。その時、解説をしていた北の富士、こう話した。
「ウーン、貴景勝は幾つ・・・二十歳・・・ウーン・・・栃煌山は・・・ウーン・・・世代交代の時なのかな・・・」、と。言葉と言葉の間に間を置いて。
稀勢の里、その栃煌山に寄り切られて敗れる。
稀勢、相撲が取れる状態じゃない。休め。休んで傷を治せ。私のその思い、強い。

9日目を終わった上位陣の星取り。
贔屓の御嶽海は3勝6敗か。しかし、御嶽海はここから巻き返す。今日は正代に敗れたが、8勝7敗、横綱二人も破り殊勲賞を受けた。よくやった。

12日目。
高安は宝富士を破り、10勝目をあげた。これで直近3場所の成績は33勝となる。大関当確か。しかし、この日の高安、勝つには勝ったが、あまり印象の良くない勝ちであった。

直近3場所の合計勝ち星、33勝のラインには届いてはいるが。
明日の一番にかかる。

13日目。
高安と日馬富士の一番。

高安の親御さんも見守っている。
フィリピン人であるお母さんも祈るよう。

高安、勝った。
はたきこみ。

これで今場所の勝ち星、11勝となった。
直近3場所の合計勝ち星は34、文句なし。高安の大関昇進は確実なものとなった。

白鵬は玉鷲を寄り倒す。激しい応酬の末。

白鵬、これで負けなしの13勝。

今日、千秋楽。
取組み前の役力士の今場所の星取り。

高安の大関は決まった。

千秋楽、白鵬と日馬富士の一番が見ごたえがあった。

立ち合い、日馬富士がいい形に持ちこんだ。前まわし、上手も取り、白鵬には上手を与えない。

日馬富士の勝機もあった。上手を引きつけ出た時に。が、攻めきれなかった。

1分半の攻防、これぞ相撲であった。
最後には、白鵬が日馬富士の上手を切り、寄り切った。

白鵬の奥さんと子供たち、喜ぶ。
解説の北の富士は、「子供たち、大きくなったね」、と。

今場所の上位陣の星取り。
ここに出ていない力士も含め、御嶽海、正代、貴景勝、阿武咲、若手力士の台頭を感じる。私の贔屓力士、豊響は、また十両へ陥落する。栃煌山も負け越した。それよりも・・・
妙義龍が大きく負け越した。来場所は十両へ落ちる。妙義龍、名大関になるかもしれないな、と考えていた力士である。
その妙義龍が幕から落ちる。角界の地殻変動が起こっているのやもしれない。

そう言えば、13日目に幕下優勝が決まった。
幕下優勝は、この力士・大岩戸。
大岩戸、36歳だそうだ。一場所だけ幕内に入ったことがある、という力士。幕下の力士、給料というものは出ない。幾ばくかのものが支給されるのみ。その中で、36歳まで相撲を取り生きてきた。
大岩戸に思いを寄せると共に、こうも思う。不思議なものだ、と。

今日、NHKで流れた映像であるが、これは、場所前の稽古場での白鵬であろう。いい顔。
今日、優勝インタビューの冒頭、白鵬はこう言った。
「ただいま、帰ってきました」、と。
白鵬、1年ぶり38回目の優勝であった。

白鵬、賜杯を抱き、NHKの中継は終わる。