クロニクル1995ー展。

MOT、2015年3月に開館20周年を迎える。
開館20周年記念、MOTコレクション特別企画の第一弾が催された。

「クロニクル1995−」、1995年以降の物語。
バブル崩壊後の影響がドンドン表われてきたこの1995年という年、1945年(昭和20年)から50年、つまり「戦後50年」という年にあたる。Windows95というOSの登場による「インターネット元年」でもある。阪神淡路大震災やオウム真理教による地下鉄サリン事件が起こった年でもある。
日本の節目の年、と言ってもいい。

現代美術の分野でも、このような社会状況に呼応する動きが現われる。
例えば、このポスターに組みこまれたモノクロ写真は・・・

小沢剛作≪地蔵建立 上九一色村≫。1995年8月10日撮影。
小沢剛、藝大在学中の1987年から世界のあちこちで「地蔵建立」の作品を作っている。”JIZOING”、と称している。
テヘランで、モスクワで、ソフィアで、エルサレムで、ペシャワールで、ラサで、天安門広場で、板門店で、・・・で、と。日本でも、羽田や、多摩川や、代々木や、国会議事堂や、・・・や、と。
で、1995年の8月10日には、オウムの本拠地・上九一色村でJIZOINGを行なったんだ。
上の写真の右側の柱の下の方に白い紙が貼られている。そこにお地蔵さまの輪郭のようなものが見える。”地蔵”である。あちこちの地でこのようなお地蔵さま模様を貼りつけ、それを写真に撮る。
これが、小沢剛の「地蔵建立」、”JIZOING”。
時代を画した。

舟越桂作≪静かな向かい風≫。
1995年の前夜、1988年の作。

MOTのエントランスホールの奥にあるヤノベケンジの≪ロッキング・マンモス≫。
いつも誰かが写真を撮っている。2005年の作。

名和晃平作≪Pixcell Elk #2≫。
2009年の作。
今、スター作家となっているヤノベケンジや名和晃平より少し前にスター作家となった奈良美智は、1995年に東京で初の本格的な個展を開いている。その後の奈良美智の活躍はアレヨアレヨ、という状態。今回も多くの奈良の作品が展示されていた。

加藤泉作≪無題≫。2006年の作。

森千裕作≪Little Trouble Girl≫。2010年の作。
それにしても、こうして見てくると、抽象、具象という概念が揺らいでくる。抽象は影をひそめ、具象化が進んでいる。そういう時代なのか。どうも、そういう時代であるようなんだ。
それはともかく、私の知る限り、日本でのコンテンポラリー・アートの専門美術館を三つ挙げれば、MOT(東京都現代美術館)、大阪の国立国際美術館、それに、名古屋近郊の豊田市美術館となる。
現代アート、先物買いをしなくてはならない。その意味で、現在のMOTは頑張っている。以前にも触れた作家であるが、上の二人の作家、加藤泉も森千裕も、今、MOTコレクションに入っている。それ故、「クロニクル1995ー展」にも展示されていた。
MOT、やってくれているんだ。