始まりは松方幸次郎。

国立西洋美術館の常設展を観るのは久しぶりである。ラファエロ展を観た後、さほど時間がなかったが駆け足で観て回った。

こういうところや、

こういうところも。
ラファエロ展の流れで人は多い。

国立西洋美術館、14〜5世紀あたりのものからあるが、ある程度のものとなると、やはり17〜8世紀あたりから。
ここらは17世紀のもの。

カルロ・ドルチ作≪悲しみの聖母≫。
カンヴァスに油彩。1650年頃の作。ラピスラズリを用いた鮮やかな青のベールが、目を射る。

フィリップ・ド・シャンパーニュ作≪マグダラのマリア≫。
カンヴァスに油彩。17世紀の作。1974年の購入品。

人が多い。
日本の美術館の常設展、まあ人がいないのが常態である。しかし、ひと月前の国立西洋美術館の常設展、多くの人が入っていた。

ここらは18世紀の作品である。左端の作品は、ヨハン・ハインリヒ・フュースリ作≪グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ≫。
ボッカチョの『デカメロン』の中の物語を描いたそうだ。それにしても、大きな作品である。天地276cm×左右317cmある。

ここは19世紀後半の作品である。
中央の彫像は、ロダンの≪説教する洗礼者ヨハネ≫。その右後ろには、マネの≪ブラン氏の肖像≫。共に、旧松方コレクション。
なお、半分切れている右端の絵は・・・

これである。
ルノワール作≪アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)≫。1872年の作。
ルノワール、ドラクロワの≪アルジェの女たち≫に触発されてこの作品を描いた、という。その香り、何よりその色調、ドラクロワの芳醇さを思わせる。これも旧松方コレクション。
松方幸次郎、1910年代から20年代にかけ、これと思える美術品を買い求めた。
当時のコンツェルンの経営者、今の貨幣価値で言えば数百億程度の金は自由になった、という時代であったから。
松方幸次郎の購入した作品、どの程度の数かは然としない。数千、という話もある。その多くはフランスやイギリスに置かれた。戦争が始まり、イギリスに置かれた作品は焼失した。フランスに置かれた作品は、サンフランシスコでの講和後、フランスとの間に返還交渉が持たれた。
返還されなかったものもある。しかし、最終的に、絵画や彫刻その他約370点が返還された。
1959年、それらの作品を展示する国立西洋美術館が開館した。”初めは、始めは松方幸次郎”の美術館である。松方コレクションから始まった美術館。

モネの≪睡蓮≫。
1916年、松方幸次郎は、この作品を作家から直接に購入している。
モネの数多の睡蓮の中でも、珠玉の逸品。

このコーナー、中ほどの2点はルオーだな。

ルオー作≪リュリュ(道化の顔)≫。
板に油彩。1952年の作。ルオー作品に多く見られるように、額縁にも着色。ルオー晩年の傑作。

ルオー作≪エバイ(びっくりした男)≫。
1948年〜1952年の作。油彩、額縁にはルオー作品には常、作品自体では収まりきらない彩色が施されている。
それはそうだが、この作品、梅原龍三郎からの寄贈品。

20世紀の作品。
右端は、ジャン・デュビュフェの≪美しい尾の牝牛≫。その左は、やはりデュビュフェの≪ご婦人のからだ ぼさぼさ髪≫。その左は、ホアン・ミロの≪絵画≫。
これら3点、いずれも寄贈品。平野逸郎なる人、山村徳太郎なる人、そして山村家より寄贈、という説明がある。
今でも、作品を寄贈する人、永々と続いている。
国立西洋美術館、始まりは松方幸次郎であった。
それが今では・・・・・、である。隠れた資産家、あなたはエライ。