マティス好みの色づかい。

毎年今頃、後藤亮子が属する真樹会展へ行く。今日、昔の仲間5〜6人で観に行った。

後藤亮子の今回の出展作は5点。
F10からF3まで。そのタイトルは、大きなものから順に、≪続Ⅰ≫から≪続Ⅴ≫。
読みは、”ぞく”なのか”つづく”なのか、と後藤に聞いた。”ぞく”と読むそうだ。「どういう意味なんだ」、と重ねて聞いた。「よく解らないが、”続く”ということなんだ」、という答えが返ってきた。
なるほど。何がなるほどなのか、という問題はあるが、なるほどである。
後藤亮子、2か月近く前、個展を開いている。その後間もなくの本展、真ん中の3点が、その後描いた新しい作品だそうである。

真ん中の作品、今までのものと比べ変化している。
色調も、引っかいたような痕も。

これも。

赤っぽくもあり、茶色っぽくもあり、黄色っぽくもある。

これはこの間の、と言っていたが、こうして見ると、その色調とても美しい。

後藤亮子の絵、セルジュ・ポリアコフの絵によく似ているな、とずっと思っていた。これをみても、ポリアコフを思い出す。
セルジュ・ポリアコフ、ロシアで生まれたが、ロシア革命で祖国を離れ、パリへ逃げてきた男。
2年ほど前、そのことを後藤に話した。彼女は、その時にはポリアコフのことは知らなかったが、その後調べ、「そういえば、そうねえー」、と言っていた。その次に会った折り。
5時前、皆で飲みに行った。
真樹会展、新宿のヒルトンの地下で開かれている。ヒルトンの地下にも飲み食い処はある。しかし、私たちは、駅近くの安い居酒屋へ行く。毎年同じ。
その居酒屋で後藤亮子に聞いた。
「貴女の好きな絵描きは誰なんだ」、と。「そうね、マティス」、という答えが返ってきた。後藤の作品、抽象であるが、解らないではない。

マティスの初期の作品、≪豪奢、静けさ、快楽≫。
1904年、南仏サン=トロペに滞在していた時に描いた作品である。オルセーの図録から複写した。
”線による可塑性”か、”色による可塑性”か、その頃のマティス悩んでいた、という。このマティスの初期の作品を眺めていると、”後藤の色づかいも、そういえば”、と思えてくる。
マティスか、後藤の原点は。

マティス、その晩年は、南仏ニースにアトリエを構え、死ぬまでの20年近くを過ごした。今、ニースにマティス美術館がある。
これは、5年4か月前のマティス美術館である。
ニースの町中からバスで3〜40分行った町外れ。5〜6人のジイさんがペタンクをしていた。そのほかには、人影はなかった。・
17世紀に建てられたという大きな建物は、赤茶色。周りの木々は緑色。

赤茶色にしろ緑にしろ、後藤亮子、思わず知らず、マティス好みの色調になっているようである。