誰からも愛された男。

今日は松井の日であった。
東京ドームでの長嶋茂雄と松井秀喜への国民栄誉賞の表彰式、それに先立っての松井秀喜引退セレモニー、長嶋と松井、なかんずく松井の日であった。

松井、引退挨拶の後、長嶋と二人、白いオープンカーで東京ドームのグラウンドを一周。
ボンネットには、二人の背番号、3と55、それに欧文で国民栄誉賞の文字がペイントされている。金文字で。

車上の二人。晴れやか。

どう考えても、安倍晋三はツイている。
昨年末の松井秀喜の引退表明がなければ、今回の国民栄誉賞はなかった。キッカケを逃していた長嶋茂雄の単独受賞も、恐らく没後受賞となったであろう。全ては、昨年末の松井秀喜の引退から始まった。長嶋茂雄の受賞も自然となった。
国民栄誉賞、時の政権の人気取り、という側面を持つ。
誰が考えても、安倍晋三、明らかに長嶋茂雄と松井秀喜を利用している。しかし、これも誰が考えても、明らかにこの二人への国民栄誉賞の授与、国民全てが納得する。長嶋や松井を好きじゃない人は、あまりいないんじゃないか。とりわけ松井秀喜は、日本人全てが好きであろう。松井秀喜が好きじゃない、という日本人は、そのヘソ、よっぽどひん曲がっているに違いない。
だから、安倍晋三、ツイている。
ああ、そうだ。長嶋と松井、今日の装いはスーツもワイシャツもネクタイも同じであった。ただ、ポケットチーフだけが異なった。派手好みの長嶋はそれらしく、生真面目な松井は昔風にと。

ユニフォームに着替えた後には、始球式。
松井秀喜がピッチャー、長嶋茂雄はバッター。キャッチャーは原辰徳、それに、アンパイアには安倍晋三。安倍晋三もジャイアンツのユニフォームを着ている。背番号は、何と96。
安倍晋三、私は96代の総理なんで、と言っている。しかし、裏がある。憲法96条だ。衆参両院議員の「三分の二以上」で発議しを「過半数」でとすること、大いに問題がある。憲法9条を変えるために、まず憲法96条の条件を緩める、という安倍晋三の考え、まともじゃないよ。狡いよ。
アメリカだって、憲法改正には上下両院の三分の二以上の賛成が必要な上、アメリカ全州の四分の三の議会によって承認されることが必要。如何にイケイケドンドンの安倍晋三とは言え、その考え、まともじゃない。
安倍晋三が背番号96のユニフォーム、それもジャイアンツのユニフォームを着ていることから、少し横道へ逸れたが、それはそれとして、今日の催し、ゼネラル・プロデューサーがいるな。
ナベツネ・渡辺恒雄である。日本国総理にジャイアンツのユニフォームを着せたのもナベツネの仕業。読売グループが仕切るイベントだ。このライヴの中継も、当然日テレ。
ナベツネが牛耳る読売グループが仕切るイベントであること、分かりきっているのであるが、やはり面白い。長嶋と松井、とりわけ松井秀喜がメーンであるから。

今日の日テレ、こういう映像も流れた。
ヤンキースの元監督・ジョー・トーリ、こう語っている。ジョー・トーリ、こうも語っている。「松井は素晴らしい選手であった。しかし、それを鼻にかけることは絶対になかった」、と。
松井秀喜と同い年であるヤンキースのキャプテン、デレク・ジーターはこう言っている。「松井は一番好きなチームメイトだった」、と。
2009年、ヤンキースはワールドシリーズを制し、ワールドチャンピオンとなった。松井秀喜、そのワールドシリーズのMVPとなった。昨日、NHKで松井秀喜の7、8時間に亘る映像が流された。
1打席目でホームランを打ち、2打席目、3打席目でもタイムリーを放ち、6打点をあげた第6戦の映像もあった。松井秀喜、ここで打つんだ、結果は分かっているのだが、その映像にワクワクした。
しかし、ワールドシリーズのMVPとなった松井秀喜に対し、ヤンキースからの翌年のオファーはなかった。費用対効果、野球もビジネス、コストパフォーマンスで測られるのは当然だ。で、松井秀喜、赤いユニフォームのエンジェルスへ移籍した。
それでもなお、松井秀喜、ヤンキースの監督、チームメイト全ての人から好かれている。
だから、こういう映像も残された。

その翌年の2010年、ヤンキー・スタジアムでのエンジェルス対ヤンキースの初戦の前のことである。
A.ロッドが、赤いユニフォームの松井に抱きついている。左にいるキャプテンのデレク・ジーター、こう言っている。
「松井がニューヨークに来たら、チームの皆んなが、ごく自然に彼にハグしたくなったんだ」、と。松井秀喜、ヤンキースを離れた後も、かってのチームメイトから好かれている。

松井秀喜を好きなのは、ヤンキースの選手ばかりではない。多くのニューヨーカー、皆んな松井が好きなんだ。こういう紙を掲げている人もいる。
「マツイ、いつまでも愛してるよ」、と。
日本でもアメリカでも、何時でも何処でも、誰からも愛された男。松井秀喜って、そういう男なんだ。まさに、日本の宝。
今日、中村紀洋が2000安打を達成した。
中村紀洋、松井秀喜より1年上。松井同様、長距離ヒッターであった。メジャリーグへも挑戦した。しかし、結果は出なかった。日本へ帰ってきた。
あちこちのチームを渡り歩いた。最盛時、年俸5億円であった男が、育成枠で拾われ年俸400万となった。でも、中村紀洋は野球を続けることを選んだ。松井秀喜とは別の道。これはこれ、中村紀洋の軌跡も面白い。