ぎんさんの娘たち。

10日ほど前のNHK「クローズアップ現代」、元気なオバアちゃんが4人出ていた。
見たのは途中からであったが、”きんさん、ぎんさん”のぎんさんの娘さんたちである。ぎんさん、5人の娘を生んだそうだ。幼くして死んだ次女を除き、他の4人は健在だ。
「きんは百歳、ぎんも百歳」の”きんさん、ぎんさん”が日本中の話題となったのは、丁度20年前。20年も経てば、その娘さんたちもずいぶん大きくなっているであろう。赤ちゃんなら大学生だ、なんてバカなことを考えるほど、役立つ番組であった。

「元気の秘けつは?」と聞かれて、4人が4人異口同音に、「雑談、雑談」。
そして、
「ヨタ話してよ、あははって笑ってたら一番じゃないかの」、「利口にはなれんよ」、「博士になるんじゃったら、これはいかん」、「バカセだ」、なんて洒落たことを話してんだから。
昨日の「MorPhys」の武井祥平さんのような若くて優秀な人もいるが、このような頭の柔らかい元気印のオバアちゃんもいる。

ぎんさんの長女は、今年98歳。三女は94歳、四女は91歳、五女は89歳。平均年齢93歳だそうである。
4人とも名古屋の南部に住む。皆、すぐ近く。連れ合いは、皆さん死んだそうだ。希に例外はあるが、男が先に死ぬのは、世の習いだからな。
近くだから、毎日昼下がりには、皆さん五女の家に集まってくるそうだ。そして、縁側でお茶を飲みながらおしゃべりをしている。「お茶菓子あるー?」、「なーい」なんてことも言っている。

キャスターの国谷裕子の隣にいる人は、国立長寿医療研究センターの予防開発部長・下方浩史という人。長寿医療の専門家。
「こうやっていつも4人、集まっているのですか? 毎日?」、と尋ねる。その答えは、「毎日、懲りもせんとなあー」、というもの。
専門家、年をとってくると、どうしても抑うつ傾向、うつになってくる人が多い、と言う。しかし、この4姉妹には、うつがほとんどない、と言う。

認知症予防の研究者、4人姉妹のおしゃべりには、血流を増加させるものがある、という。
「山の話をしないとな」、「あらま、そうかね。私、食うことだけかと思ってた」、「食わないかん、食わないかん」、「そりゃ、もみじきれいだよ」。こういう、東大大学院の、いずれかの学際領域の研究室で研究してもらわなければならないような、哲学的な問答も出てくる。
これも、認知症の予防に役立っているんだ。

「残っとるよ」、「食べれん」、「もったいにゃあが」、「いいが、あしたの朝、食うよ」、「その手があった」、「まだ生きとるもん」、「死んだりしんもん」、「知らなんだ」、「もう死んだと思ったがな」、・・・・・、・・・・・。
このようなおしゃべりが老化を防ぐ、ということのようだ。

番組の終わり、キャスターの国谷裕子、常にもまして深々と頭を下げていた。
今日はいい話を聞いた、パワーを貰った、との思いが強くあったのではなかろうか。