統率あるいは統制。

京大の山中教授のiPS細胞に続き、「STAP細胞」という新しい万能細胞がまた発見された。凄いことだ、と世界中が驚き、日本中が沸き立った。1月末のことだった。
その研究を主導したのは、理研の発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子ユニットリーダー。白い割烹着を着たまだ30歳の女の子であった。
<隣町のおネエさんが凄い発見をした>、そして、<日本国、捨てたものでもないんじゃないか>、と私は書いた。
私の”雑録”などはどうでもいいが、日本中の紙媒体、電波媒体、Web媒体が、「ヤッター」と盛り上がった。NHKは、”生物学の常識を覆す 30歳リケジョの快挙”、と報じた。
日本中が沸き立った。
が、幾つもの疑点が指摘されるようになった。コピペじゃないか、写真が使いまわしされているんじゃないか、という。
昨日、理研が記者会見した。どうも、そういうことがあるようだ。残念だ。理研の理事長であるノーベル化学賞の受賞者・野依良治が頭を下げた。
恐らく、今後のノーベル賞選考の過程で、日本人には厳しい眼が注がれるであろう。これも辛い。
それはそれとして、今回の研究、主導したのは30歳の小保方晴子であるが、4チーム、14人の研究者が関わっているそうだ。
世界的に知られた研究者も名を連ねている、という。
それがどうして、と思う。
恐らく、研究全体、発表論文全体に目を配る人がいなかったんだ。14人の研究者、あるいは4チームの研究、それを統括する人がいなかったんだ、きっと。結局、4チームの研究論文を切り貼りした、ということであろう。
主導した小保方晴子自身、プロジェクトの統率あるいは統制という意識があったかどうか。今となっては、疑わしい。
社会科学と異なり自然科学は、経験よりも直感に左右されることが多い。
そうは言っても、リーダーは僅か30歳の女の子である。自らに酔い、功名心に駆られるなんてこともあったであろう。統率あるいは統制なんてことは、考えの外であったかもしれない。
古来、若殿や姫が陣頭に立つ場合には、百戦錬磨のジイやババが補佐役に付くのが常道。今回の小保方晴子には、残念ながら、全体を統率あるいは統制できる、そのジイやババがいなかった。
日本国にとっては、とてもつらいこととなった。