MorPhys(モルフィス)。

MOTでは、昨年秋の頃から1年に亘り、「ブルームバーグ・パヴィリオン・プロジェクト」が続けられていた。
MOTの敷地内に建てられた平田晃久設計によるパヴィリオンを舞台に、1年間にわたって若手アーティストの個展や公募展、パフォーマンス・イヴェントを行っているプロジェクトである。
その掉尾を飾る公募展、「メディア・パフォーマンス部門」の受賞展が9月末から10月始めにかけて催された。グランプリを受賞したのは、武井祥平の「MorPhys」。
しかし、「MorPhys」って何なんだ。解らない。何語かも解らない。どういうものかも解らない。

これは、平田晃久設計のブルームバーグ・パヴィリオン。

三角形、或いは六角形が増殖している、というような感じ。
大きな窓がある。中が見える。

ガラスの窓には、字が書いてある。

このようなもの。
グランプリは、武井祥平の「MorPhys」と。

パヴィリオンの中に入った。
隅のほうで、若い男が何やら小さなロボットみたいなものを操作している。調整しているようにも見える。
この男が、グランプリを取った武井祥平らしいな、と思い声をかけた。「貴方が、武井祥平さんですか?」、と。「そうです。武井です」、という声が返ってきた。
見ると、スラリと背が高い二枚目。今風の言葉で言えば、イケメン。黒い細身のパンツに白いシャツ、という姿もなかなかカッコいい。

こういう3つの装置がある。
ロボットのようにも見える何らかの工作物、ないしは製作物。これで、三角形の四面体を作る、と言う。
この写真も含め何枚か写真を撮っていると、係りの人から、「中は撮影禁止です」、と言われた。武井祥平さんからは、「僕は撮っていただいてもいいですよ」、と言われたが、外へ出た。
窓の外からでも撮ることはできる。多少は不鮮明にはなるが。

武井さん、しきりに3つの白いものを触っている。白いものには、巻き尺とモーターが入っているらしい。それが、上のモニターのように、伸びていき、三角錐、三角形の四面体を作る。

その内、タイトルの”MorPhys”が出てきた。”Morphs”と”Physical”を合わせた造語らしい。その前と後ろには、”Architecture”と”Environment”という語がある。
「物理的に変化する状況の中での建築」、とでもいうことか。

基本は、これだ。
これが伸びて、三角錐、さまざまに変化する三角形の四面体になる。
MOTのパンフに、武井祥平、その作品「MorPhys」について、こう記している。
<この作品は、私が思い描く新しい建築の原始の姿です。四面体をなすこの造形は、光を求めて移動します。呼吸をするように、膨張と収縮を繰り返します。これは移動する空間であり、変容する構造です。環境に呼応して変化する、生命のような未来の建築です>、と。

こういうように。
今後、これがどういうように、どういう建築となっていくのか、私には解らない。しかし、何やら解らないものの未来、大きな展開があるに違いない。作家・武井祥平が言っている、「環境に呼応して変化する、生命のような未来の建築」、として。

長身のイケメン・武井祥平、身をかがめ、いつまでも小さな白い製作物に触っていた。
その後、武井祥平さんのことをチェックして驚いた。
武井祥平、東大大学院、情報理工学系、苗村研究室のメンバー。この研究室、情報メディアと他の学問との学際、境界領域の研究をしている模様。面白そうなことをやっているようだが、難しそうなことは当然。
さらに、何と、武井祥平さん、昨年、東大総長賞を受賞している。
東大総長賞がどれほどのものか、知らない。社会活動や国際交流、課外活動で受賞している人もいる。でも、武井祥平の選考区分は、学業であった。これぞ、王道というものでの受賞。
武井祥平、その修士論文、「リール式伸縮アクチュエータの提案と3次元形状表現システムへの応用その他で示された学績」、で東大総長賞を受賞している。おそらく、その結実が、MOTでグランプリを取ったこの作品なんだ。
それはいい。それはいいとしても、考える。
天におわす神さま、いかになんでも、少し不公平なんじゃないか、と。
通常は、背が高くカッコいいイケメンの男は、オツムの具合が少し緩いとか、反対に、オツムの中は凄いが、その顔貌は人間離れしているとか、というのが一般社会の通り相場であろう。
それが、この”MorPhys”の武井祥平さんに限っては、その限りにあらず、という状況。あれもこれも、みな完備。希には、こういうこともあるのか、な。