灯り。

今年の東博、いわばハレの年。140周年記念の特別企画が多い。東博140周年と、日中国交正常化40周年とを絡めた企画も幾つも行っている。
いつも夜は暗い東博構内、この日だけはあちこちに灯りがある。

小さなガラスの器の中で、ロウソクの灯りがゆれる。

ライトアップではないが、正面右の東洋館に灯りが点いている。
3年余に及んだ改修工事、ほぼ終わったようだ。東博お得意のフレーズ、”博物館に初もうで”で、来年1月2日にリニューアルオープンとなる。

こちらはライトアップされた本館入口のスロープには、トラックが停っている。横っ腹にはKODOと書いてある。太鼓を積み込むんだな。

本館正面の明かりが灯されたところでは、鼓童のスタッフによって、太鼓が毛布の兄貴分のようなものに包まれている。
揃いの黒いTシャツの背には、鼓童の文字が白抜きで。

その中、本館入口を入った大階段の上には、大きな幟。ハレの年のキャッチコピー「140周年 ブンカのちからにありがとう!」の文字。
この10日から年末にかけての2か月余の間も、「中国王朝の至宝」と銘打った特別展が催される。東博の世界では、日中関係がどうのこうのなんてケチなことは言わないんだ。”ブンカのちから”だ。

東博を出て、公園内を歩いていると、何やら光るものが立っている。ライトアップされているのか、自ら光を発っしているのか。
今まで見かけなかったものである。藁人形のようなものである。こんなものいつからあるのだろう。少なくとも、その1週間前にはなかった。

その横の方には、こういうものもある。ここに写っているのは4つだが、まだあったかもしれない。
これを暫らく眺めていたジイさんが、向こうの藁人形はいいが、こっちのヤツはセンスがないな、と呟いて立ち去った。こうして見ると、昔の灯台の屋根を取り払ったようにも見える。さほどの明かりも当てられていないが、これはこれで何がしかの意を持っているのであろう。

光っている藁人形に近づく。説明書きがついている。
このもの、タイトルがついている。≪立つ人≫、となっている。
東北の稲ワラを使い、東北復興への祈りを具象化したものだそうだ。芸大の美術学部の学生たちが制作に関わった、という。東博140周年とは、直接の関係はなさそうだ。
どうも、9月29日から1か月間、つまり今、上野公園で”全国都市緑化フェアTOKYO”、という催しが開かれているそうである。この≪立つ人≫、そのシンボル・モニュメントであるらしい。
東博140年とは直接の関係はないが、その東博の「スペシャルありがとうデー」である9月21日に設置、その夜からライトアップを始めたようだ。
だから、今月いっぱい、今夜も灯が灯り、この藁人形、光っていることであろう。東北の復興を念じて。