二科展。

毎年、暑さのピークも過ぎそろそろ秋も近いかなという頃、小さな封筒が届く。
封を切ると、二科展のチケットと一筆箋。こう書かれている。<又、二科の季節が参りました。よろしかったら、おさそいあわせておでかけ下さい>、と。二科の会友・久保寺洋子からの便り。学生時代からの付き合いだから、50年になる。

二科展、絵画、彫刻、デザイン、写真の4部門。おそらく、入選者の総数は、3〜4000人に及ぶのじゃないか。国立新美術館の1階から3階までを使っている。もちろん、すべてなど観ることはない。
古い仲間と語らって、久保寺洋子の作品の前で待ち合わせる。

今年の久保寺洋子の出品作≪輪違屋 Ⅱ≫。100号の油彩画。
京都、島原の置屋・輪違屋の太夫を描いたもの。タイトルの後ろの”Ⅱ”という数字は、今年描いた”輪違屋”の2作目という意。何年か前、数字の意味を聞いた時、そう言っていた。同じテーマの作品を、年に2〜3作描くようだ。100号の大作を。
ところで、私のこの雑ブログ、始めてから3年余となる。
3年前、2009年の二科展に載せた久保寺の作品も”輪違屋”である。2年前も”輪違屋”、昨年も”輪違屋”である。そして、今年も”輪違屋”。
つまり、毎年毎年、同じテーマの”輪違屋”。私も毎年、同じテーマの久保寺の作品を載せている。悠揚迫らぬグランマの久保寺洋子に、私も合わせている。私の方は、悠揚迫らぬには程遠いが。
それはともかく、同じテーマでタイトルも同じでも、作品は、もちろん異なる。今年の出品作は濃密だ。十分に行きついたんじゃないかな。
そうは思うが、なになに、来年も”輪違屋”であるに違いない。細かなことは、なんにも考えないグランマであるからな、久保寺洋子は。
それはそれとして、久保寺洋子の作品を観れば、二科展に行った目的はほぼ果たされるのであるが、絵をあと1点。
今や、二科の顔となっている工藤静香の今年の出品作を。

工藤静香の作品。タイトルは、≪Imagine≫。80号の油彩画。
3年前に載せた作品とよく似ている。3年前のタイトルは、≪瞳の奥≫。深いグリーンっぽい瞳であった。おそらく、ご自分の娘さんを描いたものだろう。今年の作品も、モデルは同じ。
それにしても工藤静香のお嬢さん、父親似である。目や口など、キムタクそっくり。

彫刻が案外面白い。
これは、中畑良孝作≪にるばーな≫。木彫彩色。彫刻の森美術館奨励賞を受けている。
サンスクリットをかたかなで、か。涅槃にしては、この人、突き詰めた顔をしている、な。

折笠孝作≪へいげい≫。素材は、流木。
睥睨というには、少し優しげだな、このライオンは。

これは、会員・神田毎実の作品。タイトルは≪価値について2012−15≫。材質は、玩具、タライ、エレクトリカルアウトレット、他。
手前のタライには、昔のセルロイドのヒヨコのおもちゃ、向こうの白いタライには、色の付かないヒヨコが入っている。二つのタライは、電線で繋がっている。タイトルは、足かけ4年に亘る価値。どういうことかは解らないが、この手のものは、解らなくて当然。それでいい。
いずれにしろ、二科には珍しい作品である。

これも、面白い。飛んでいる。
会員・津田裕子の作品。タイトルは≪浮遊ー2012−≫。材質は、FRP。
これは、どこか解かるような気がする。どこが、何が、なんてヤボなことは言わずに眺めれば。色づかいも美しい。

出口に近いところに、南相馬市立石神第二小学校の子供たちによる合作があった。子供たちのアイデアで、一枚に仕上げたそうだ。
タイトルは、≪未来の夢のまち、がんばろう福島≫。
このように美しい色合いの町になればいいな、将来の福島が。

入口だけを覗いた写真部門。
入選作が、ズラーと並んでいる。どこまでも。
入選作がこれだけズラーだから、応募作といったら一体どれほどの数になるのだろうか、ということを考える。
だが、私たちジイさん、バアさんのグループは、中へは入らず、国立新美術館を出て、居酒屋の方へと歩いていった。