2時間幾らと、残り1秒。

所用があり日中外出、夕刻から飲み、8時過ぎに戻ると、女子マラソン、半分ほど進んでいた。先頭は、まだ集団。
そのうちだんだん篩にかけられ、35キロ過ぎだろうか、5人に絞られた。ケニアの選手が3人、エチオピアの選手が2人だったろうか。その後、ケニアとエチオピアの選手が1人ずつ落ちていったように思われる。しかし、その前後、ロシアの選手が猛烈に追い上げ、ケニアとエチオピア、アフリカ勢3人の中に割りこんだ。
陸上長距離の2大強国、ケニアとエチオピアに非アフリカのロシアが挑む、という構図となった。

40.7キロ、先頭はエチオピアの選手、2番目はケニア、3番目はロシア、4番目はケニア。
先頭のエチオピア選手のタイムは、2時間18分57秒。
左手に今までのオリンピック・レコードが出ている。2000年のシドニー、高橋尚子が出した2時間23分14秒。このタイムが切れるぞ、という模様だ。
この後、ケニアの選手が遅れだし、エチオピア、ケニア、ロシア、この3選手の争いとなる。解説の有森裕子の話では、3000メートルの記録は、この3人、ほとんど変わらない記録を持っている、という。
誰が、どのタイミングでスパートするか。

41.2キロメートルとなる。
この少し前、エチオピアの選手、スパートをかける。まず、ロシアの選手が離され、ケニアの選手もついていくことはできなかった。
先頭のエチオピアの選手の名、ティキ・ゲラナという名であった。


そのままゴール地点のザ・マルに戻ってくる。後ろはバッキンガム宮殿。ザ・マル、そこからトラファルガー広場へ真っ直ぐにのびている。
ロンドン五輪のマラソンコース、ザ・マルをスタートし、いわばロンドンの観光名所を巡る。セントポール寺院、タワーブリッジ、ビッグベン、さらにシティーの中も。ああ、ロンドンだなー、という感じで、それがまた面白い。

フィニッシュ、ゴール地点だ。
優勝はエチオピアのティキ・ゲラナ。2位はケニアの選手、3位はロシアの選手。
ティキ・ゲラナの優勝タイムは、2時間23分07秒。Qちゃん・高橋尚子のシドニーでのタイムを破るオリンピック新記録であった。
それにしても、マラソンは、やはり面白い。途中から半分ほどしか見ていなくとも、見知った選手が誰もいなくても。名も知らぬ選手がスタスタと駆け抜ける模様を見ているだけで楽しい。これもオリンピック。
そのどのくらい後であろうか、リモコンをカチカチしていたら、フェンシングが出てきた。男子フルーレ団体の準決勝。日本対ドイツである。団体戦は、それぞれ3人の選手が出、総当たり戦を行うそうだ。
フェンシングでは、北京五輪の個人戦で、太田雄貴が銀メダルを取ったことは知っている。その太田雄貴、ロンドンでの個人戦は途中で敗れた。途中から見た今日の団体戦でも、太田雄貴、ポイントを奪われることが多かった。
3人ずつの総当たり、つまり、9試合行われる。その最期の9試合目、日本のエース・太田雄貴が登場する。左が日本の太田雄貴である。
その時点で、日本がドイツに3ポイント上回っている。日本の準決勝での勝利、決勝進出が近い。

しかし、太田雄貴、それまでリードしていた3ポイントを失う。さらに、逆転される。少なくなった時間帯で、2ポイントのビハインドを負う。1ポイント返す。まだ、1ポイン、トリードされている。
残り時間2秒となり、試合再開。
残り1秒、太田雄貴、ポイントを奪う。40対40。延長戦に入る。残り1秒で、首の皮がつながった。

延長戦、このような場面が何度も現れる。お互いに、自分のポイントが入った、と腕をあげアピールする。その度に、審判席ではビデオ判定が繰り返される。ビデオ判定、延長戦で3回繰り返された。
3度目に日本の勝ちが認められた。日本、フェンシング・フルーレ団体、決勝へ歩を進めた。

今回のロンドン五輪の日本選手団の団長は、上村春樹である。柔道の元世界チャンプ。モントリオール五輪の無差別級チャンプでもある。今日、その上村春樹、ロンドン五輪の金メダル予想を下方修正した。
当初、上村春樹が予測していた日本の金メダルは、世界5位以内の15個から18個。今現在の日本の金メダルは、わずか2つ。
柔道、体操、競泳、これらで見込みが外れた、という。確かにそうだ。銀や銅は、そこそこ取っている。しかし、トップには立てない状況だ。ひとえに、気合、気概が足りない。
その中で、フェンシング男子フルーレの団体の3人、やってくれているのじゃないか。太田以外、初めて知る名であったが。
2時間幾らと、残り1秒、対極にある時間であるが、共にギリギリの闘いがそこにある。
長きにしろ一瞬にしろ、その時間の中に美しさがある。