パリ+リスボン街歩き  (15) ポンピドゥー(続き×3)。

大方の予測の通り、昨日のフランス大統領選、サルコジは敗れ、フランソワ・オランドが第五共和制7人目の大統領となった。同じファーストネームを持つミッテラン以来、17年ぶりの社会党の大統領。
別れた前のカミさんが、前回の大統領選のサルコジに敗れた候補者・ロワイヤルである、というのも凄いが、今のカミさんは、正式には婚姻関係にないいわゆるパートナー。この点でも、さばけたミッテラン、いや、サルトルとボーヴォワール以来のフランス左翼の伝統を踏襲している。
それはともあれ、やはり昨日行なわれたギリシャの議会選でも、連立与党は敗れる。厳しい緊縮財政策はイヤだよ、ということであろうが、これも絡み、今日のマーケット、ユーロは売られ、世界中の証券市場、軒並み大きく下げた。ヨーロッパの連中、差し当たりのことしか考えていないようだ。自らの行動が世界中に影響を及ぼすことなどには、さほど思いを致す余地もなくなっているのかもしれないな。
ま、それも仕方のないことかもしれないが、オランド、差し当たりはドイツのメルケルとの差しの協議にかかっている。いずれにしろ、子供の電車ごっこに例えれば、メルケルが運転手でオランドが車掌だ。”メルコジ”と言われた独仏の関係、メルケルとオランドで”メルンド”の関係を築くことができるのか、ここ暫くのオランドの度量が試される。
選挙と言えば、今日5月7日、シリアでも議会選が行なわれている。
形を取り繕うだけだ、ということも言われ、反体制派は”茶番”と批判している。当然であろう。アサド政権、連日連夜、数十人ずつのシリア国民を殺しているのだから。国連の停戦監視団が入っているが、何の役にも立っていない、と言っていい。
世界の調停役として、今、考え得る最強の男、前の国連事務総長、コフィー・アナンが何度かダマスカスへ入り、大統領のアサドと話しているが、思わしい進展はない。
同じく世界の問題児であるが、すぐカッとなる北朝鮮が可愛いく思えるほど、シリアの対応はしたたかである。アナンを手玉に取るんだから。大統領のアサド以下、トンデモナイ連中である。
ポンピドゥーにこういう作品があった。

モノクロ写真である。
ここには6人しか写ってないが、10人ほどの人の写真である。タイトルは、「シリアの抵抗者」。1970年に撮影されたものである。
1970年といえば、今のシリア大統領、バッシャール・アル=アサドの父親のアサドがクーデターでシリアの実権を握った年である。これらの”シリアの抵抗者たち”、当時のアサドの側にいた者か、反アサドの場にいた者か、よくは解からないが。
いずれの”抵抗者”も、弾丸の帯を胸に十字に掛け、前を凝視している。


エロー、というのか、ウローというのか、中国人画家の作品。
左は、「サン・マルコのマオ」。1975年の作。
ここ数十年の中国絵画の潮流のひとつに、毛沢東をさまざまな形にアレンジしたものがある。そういう言い方があるのかどうか知らないが、私は、単純に”毛沢東絵”と呼んでいる。これもそのような”毛沢東絵”である。
毛沢東の背景には、ヴェネツィアのサン・マルコ寺院の鐘楼が描かれている。どういうことだ。キッチュな絵である。
右の絵のタイトルは、「モスクワの水彩絵の具」。
水彩絵の具で絵を描く、何人かの中国人の子供たちが描かれている。その右上に、何やら中国の子供たちとは相応しくないものが描かれている。モスクワの赤の広場、そこの聖ワシリー寺院である。これも、ここ数十年に描かれた、中国のキッチュな絵のひとつ。
”毛沢東絵”を始めとした中国のキッチュな作品、ポンピドゥーも無視できない模様である。日本人作家の作品は、トンとお目にかからないが。

こういうものがある。ヨーゼフ・ボイスの作品である。その入口。

ひとつの部屋、覗くとこういうものがある。
何やらフェルトのようなものが壁際に立て掛けられている。

こちらを見ると、こう。
何やら、ピアノのようなものもある。”ような”というより、これはピアノである。それがどうした。
ヨーゼフ・ボイス、不思議な作家なんだ。ともかく不思議。ホント。

こういうものもある。
アンドレ・ブルトンの書斎にあったものである。


アンドレ・ブルトンを抜きにして、現代美術は語れない。
中央の大きな絵は、ホアン・ミロの作品。タイトルは、「頭」、1927年の作。
左上方の絵は、フランシス・ピカビアの「私に持ってきてくれ、LHOOQ」。またのタイトル、「二つの世界」。
”LHOOQ”、マルセル・デュシャンの”LHOOQ”である。この頃の美術の世界、”LHOOQ”、なる言葉、ある種何らかの意味合いを持つ言葉であった。
その間にあるものは、ニューギニア、イリアンジャヤの木の楯。
ジョルジュ・ブラック、ロベルト・マッタ、ホアン・ミロ、マルセル・デュシャン、アンリ・ルソー、パブロ・ピカソ、アルベルト・ジャコメティー、ジャン・アルプ、ワシリー・カンディンスキー、小品ではあるが、ここには20世紀を代表する多くの作家の作品が、これでもかと並んでいる。そのすべては、ブルトンが作家自身から贈られたものであろう。おそらく。
また、ニューギニアばかりでなく、アジア、アフリカ、アメリカ各地の仮面などの品も多い。これらはブルトンが購ったものであろう。パリの古道具屋や骨董市で。

アンドレ・ブルトンの書斎にあったものものを構成したもの。その一部を拡大すれば、こうである。

このように、これは何と解かる。これは左の方の”これは何”。

右の方を見てみれば。

こういう表示が出ている。
字が小さくて読むことは難しいが、アンドレ・ブルトンの書斎、そこにあった120点の作品が展示されている。
憶えておられるお方は少ないであろうが、1年少し前、昨年の4月19日のブログで、アンドレ・ブルトンの書斎のことを書いたことがある。ブルトンの書斎の映像のこと。国立新美術館での「シュルレアリズム展」に触れた折り。
その映像の基、こういうものであった。