赤い材木と岩手の土。

数日、お休みしました。少し具合が悪かった。そろりと戻ります。
日本の美術館の中では、少しスペースに余裕があるためもあってか、MOTでは、常設展の中でもテーマを設定した企画展を行なっている。いわば、常設展中の特別企画。今年初めはこのようなものであった。

「布に何が起こったか? 1950−60年代の絵画を中心に」、「木の時間、石の時間」。
トータルのアイキャッチとしているのは、ケネス・ノーランドの≪ヴァージニア・サイト≫、1950−60年代のど真ん中1959年の作。
とても面白く、しかも、初めて見たものが二つあった。
一つは、白髪一雄の立体作品。
白髪一雄の平面作品、厚塗りなどという範疇にはとても入らず、半立体と言ってもおかしくはない。キャンバスに絵具を塗るのではなく、キャンバスの上で絵具をこねくりまくる。足で。コロンブスの卵だ。画面は厚くうねる。しかし、いかに厚く絵具が盛り上がっていようと、どのようにうねっていようと、平面は平面。
その白髪一雄の立体があった。白髪の立体作品、初めて見た。これが凄い。
タイトルは、≪作品(赤い材木)≫。
立方錐の上の部分を切り取った形。台形立方錐とでも言うのか。その骨組みのみ。角材で。全面、赤い塗料で塗ってある。塗ってある、というよりも塗料に浸けた、という感じ。ぬめっとした感じを、見る人に与える。
縦、横、高さ、いずれも2メートル弱。骨組みだけだから、そう大きな感じではない。だが、存在感がある。迫ってくる。
白髪の立体”赤い材木”、初めて知った。よかった。
あと一つの”初めて”は、栗田宏一の作品。面白い。魅かれる。
≪POYA DAY 満月の日の小石拾い108夜≫、という作品がある。さまざまな小石が並んでいる。
”POYA”とは、シンハラ語で”満月”という意だそうだ。満月の日に、小石を拾っている。いろんな所で。108か所。日本のあちこちもあれば、シェムリアップとかバラナシとかカトマンドゥとかといった所もある。
制作年は、1991−1999年。満月は、概ね月に一回だから、これだけの年数がかかる。108とするためには。
不思議な作品だ。時間なのか、反復というところに何らかのことがあるのか、或いは、拾うという行為そのものに、何かが隠されているのか。コンセプチュアルアートの範疇に入るものであろう。ふと、ニューヨークの何処かの彼方へ消えた河原温の”日付け”が、頭をよぎった。彼ら二人の頭の中、おそらく、その構造似ているに違いない。
栗田宏一、「ソイル・ライブラリー」というプロジェクトをやっている。文字通り、”土”のライブラリー。
土を一握りずつ採集し、乾燥させ、ふるいにかける、という行為を繰り返しているそうだ。その土の色、ヘェーと驚くばかりに美しい。
”岩手の土”があった。正式名称は、≪土の時間/岩手≫。
岩手県全土の土を集めてある。数えたら、12×16、192あった。岩手県の192か所で採集したものだろう。
大震災後の作品かな、と思った。しかし、制作年は、2007年。各県の土もあるのだろうか。それとも、岩手県は何か特別のことでも。大震災の前でさえも。
それにしても、土、ただの土に違いなかろう。が、とても美しい。暖色系が多い。面白い。また一人、気になる作家が現れた。