強い形。一期は夢よ ただ描け、であるか。

４月初めのギャラリー檜ｅ・Ｆでの松浦延年展と同時期、少し離れたギャラリー檜Ｂ・Ｃでは杉木奈美展が催されていた。
杉木奈美の作品を見るのは初めてである。が、作家・杉木奈美の名は何年か前から知っている。松浦延年がらみで何度か案内をいただいていたので。姓は異なるがおそらく松浦さんのパートナーであろう、と。ギャラリー檜Ｂ・Ｃの人に訊ねると、「そうです。松浦さんの奥さんです」ということであった。
一昨日記した丸山則夫さんも奥さんとは姓が異なっている。松浦さんと杉木さんも。共に戸籍上はどうなっているのかは知らないが、日常は夫婦別姓という人たち、案外身の周りにいることを感じる。少なくともクリエーティブ分野に関わっている世界では。

それはともかく、ギャラリーへ。

ギャラリー檜のＢ室へ入る。
入ってすぐ、一番端の作品に近寄ろう。

ハイパーリアリズムという言葉が浮かぶ。
リアルなものが何であるのかは、分からない。おそらく作家・杉木奈美の頭の中にのみ存在する「もの」。それがハイパーリアルに描かれている。
タイトルは、おそらく≪Ｋ９６０２４≫。「Ｋ」が何を示すのかは分からない。他のタイトルの頭には、Ｋの他、Ｅ、Ｈ、Ｉ、Ｓ、Ｆがあった。その後の数字は制作年月日であろうと思われるが、必ずしもそうとは思われないものもある。

その右の作品。
何か人体の中を開いたよう。血管であろうか管がリアリスティックに。

何百年、何千年、波に洗われすべすべとした肌となった小石の集積を描いたよう。
ハイパーリアリズムである。

Ｂ室からＣ室へ。

作家・杉木奈美のプロフィールがあった。
中に、＜関西で美術活動を始めた者には具体美術は当たり前だった。・・・・・堀尾が私に残した言葉は「絵を描け」だった＞、という言葉が記されている。
杉木奈美、具体美術の、堀尾貞治と同じ空気を吸っていたようだ。で、堀尾貞治から「絵を描け」と。「一期は夢よ　ただ描け」であろうか。
堀尾貞治と杉木奈美、その作品はまったく異なるが、その心は同じであったのであろう。
５年前、２０１４年のアートフェア東京に「脈々と具体」というブースがあった。堀尾貞治の作品もあった。
そのブースの出展画廊の人が「作家の方も見えてます」と言って年配の女性を紹介してくれた。その女性、名刺をくれた。そこには「具体　森内敬子」と墨で書かれていた。デンとした墨文字で。具体の女性は強いな、という印象を持った。
それよりは後の世代であろうが、具体の堀尾貞治と繋がっている杉木奈美も強い精神を持つ女性だと思われる。

Ｃ室へ入る。
一番左の作品は・・・

これ。

さらに近づく。
イメージに浮かぶ形を具象化しているやに思える。

ここにも。

ここにも。

より近づき・・・

これ。
なお、杉木奈美の作品、素材はすべて、紙にアクリル絵具、胡粉、墨、色鉛筆である。

ボヨーンとしているが・・・

不思議な形を描く。

不思議な形、生き物かもしれない。それをハイパーリアルに描く。具体の流れを汲む女性、強いんだ。

空、空間に消え入る形、その儚げな筆致も精妙無比、ハイパーリアルである。

米中貿易戦争、今日トランプが中国からの２２兆円分の関税を１０％から２５％に引き上げた。億の単位は何となく分かるが、兆の単位となるとよくは分からない。中国も報復措置をとるそうだ。
トランプも習近平も好きじゃない。だから、二人で勝手に角突きあってくれって思うのであるが、それが米中だけの問題ではないことが困るんだ。まったくもって、今の世の中。